井坂 亮平

長身右腕、スライダー軸型

右投右打
藤代高〜中大〜住友金属鹿島 楽天09ドラフト3位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
09 楽天 15 0 2 3 0 1 54 67 6 23 21 0 1 34 5.67
10 楽天 7 1 2 4 0 0 35 1/3 50 5 17 12 2 0 20 5.09
11 楽天 15 0 3 5 0 0 66 2/3 80 5 25 16 6 0 32 4.32
通算 3年 37 1 7 12 0 1 156 197 16 65 49 8 1 86 4.96

先発入りを目指す投手。ここまで目立つ結果は残せず一軍定着しきれないが、毎年ローテーション候補に名を連ねる。
大学・社会人時代たびたび肘を故障し、アマチュアではあまり注目されてはいなかった。しかしドラフトでは3位となかなかの順位で指名され楽天入り。二軍の内容もさほどではなかったが、5月に昇格即先発。この試合を6回3失点でこなし、チーム史上初の新人初登板初勝利を達成した。病気による離脱があって2勝に留まったが、先発候補に名乗り。
186cmの長身から最速150km級の速球という触れ込みだったが、実際のところスピードは平均で140kmを少し下回る中の下といったところ。持ち味はスライダーのほうにあり、これが投球の軸。
2年目の10年は交流戦の時期に昇格して先発勝利を挙げ、しばらくローテーション入り。プロ初完投勝利も記録した。ただその2勝目以降は冴えない投球が続き、8月以降は二軍暮らし。登板数半減で停滞に終わった。昨年も一軍合流は7月以降。連敗のあと1勝を挙げ、短期間リリーフで投げた後8月以降はローテーション入り。自己最多のイニング数を投げ、3勝をマークと少し前進に成功。
ただ4点台の防御率は昨年の水準ではだいぶ物足りない数字で、12度の先発中5試合で5回以前に降板。先発の一角に食い込んだとまでは言えず、あくまで谷間要員という印象を拭えなかった。被打率が3割を越えていては投球が綱渡りになるのもやむを得ず、もう少し球威か高い制球力かが欲しいところ。そろそろフルシーズン一軍にいたい。

石井 一久

メジャー帰り、先発型

左投左打 最多奪三振(98,00)、最優秀防御率(00)
東京学館浦安高 ヤクルト92ドラフト1位〜01、米メジャー(ドジャース02〜04、メッツ05)、ヤクルト06〜07、西武08〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁打 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
メジャー通算 105 2 39 34 0 - 564 508 70 435 354 17 22 278 4.44
08 西武 25 1 11 10 0 0 135 1/3 150 16 108 40 11 1 65 4.32
09 西武 22 0 9 9 0 0 130 113 18 131 67 6 6 62 4.29
10 西武 18 1 9 6 0 0 104 2/3 105 10 93 34 2 9 43 3.70
11 西武 23 0 6 9 0 1 117 122 7 94 32 10 1 56 4.31
日本通算 16年 388 23 133 97 1 1 2015 2/3 1745 197 2036 893 96 111 816 3.64

日本で7度、メジャーで2度の二桁勝利を記録し、豊富な経験を持つベテラン左腕。そのキャリアのほとんどを先発で過ごし、息の長い活躍を見せる。
甲子園とは無縁でも高校時代から評判だった投手で、ドラフト1位でヤクルト入り。左腕から繰り出す150kmの速球と大きなカーブを武器に、1年目から一軍マウンドを踏んだ。速さに比例してノーコンでもあったが、球威はプロでも一級品。順調な成長で4年目の95年に13勝を挙げ、チームのエース格となった。翌年こそ故障で不振だったものの、復帰した97年以降は4度の二桁勝利を記録。最多奪三振を2度、00年には防御率タイトルにも輝き、日本でもトップクラスの左腕と目される存在に。
速球と、故障以降はスライダーが投球の軸。かつてはひどく四球の多かった投手で、98年にはシーズン100を超える数字を記録。この年記録した20暴投は06年までの日本記録で、通算でも現役最多、村田兆治に次ぐ史上2位の記録保持者。だがその荒れ球も大きな武器の一つで、奪三振が非常に多かった。2度の最多奪三振はいずれもシーズン200の大台突破で、荒々しい投球を持ち味としていた。
早くからメジャー志向と言われていた通り、01年チームを日本一に導くとそのオフにポスティングを利用してドジャースに。ドジャースでの3年間はすべて先発登板で、02年に14勝、04年に13勝の活躍を見せた。四球はアメリカでさらに増えてしまったが、充分な力を示した。
メッツに移った05年に3勝と不振、自由契約となり翌年から日本に復帰。古巣ヤクルトに戻った06年は前半いまいちも後半大きく巻き返し、11勝とまず期待通りの働きを見せた。07年はやや不調で9勝に終わると、08年FAで西武に移籍。初めてのパ・リーグで序盤は目覚しい活躍を見せた。5月までに6勝をマークし、チームの首位快走の原動力の一つに。夏場から失速して二桁敗戦も喫したが、2年ぶり7度目の二桁勝利達成。
さすがにベテランとなりかつて程のスピードはないものの、依然荒れ球を武器に捉えどころのない投球が持ち味。09年は前年とは逆に6月終了時で防御率5点台の3勝という不調から後半上昇、7月以降6勝で二桁には届かずも9勝を挙げた。10年も先発の一角として回転。故障で2ヵ月戦列を離れたものの9勝をマーク。
ただ昨年は全体的に不調。投げてみなければ調子がわからないというのは以前からの傾向だが、好不調の差が激しくなった印象。特に終盤4連続で5回持たなかったことで、最後の2試合はリリーフに廻った。シーズン6勝は日本復帰以降最少の数字。
ムラは強くなったが、いいときはスイスイ抑え大幅な力の低下は感じさせない。軸というのはさすがにもうきついが、先発4,5番手としては魅力のある存在。

石井 弘寿

剛球左腕、長期故障型

左投左打 最優秀中継ぎ(02)
東京学館高 ヤクルト96ドラフト4位〜11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 ヤクルト - - - - - - - - - - - - - - -
09 ヤクルト - - - - - - - - - - - - - - -
10 ヤクルト - - - - - - - - - - - - - - -
11 ヤクルト 1 0 0 0 0 0 1/3 0 0 1 0 0 0 0 0.00
通算 16年 339 0 27 15 55 11 426 2/3 335 44 485 156 7 19 126 2.66

かつて五十嵐とともに「ロケットボーイズ」と呼ばれたかつてのリリーフエース。平均的に150km前後を記録し、左腕では当時日本球界最速を誇った豪腕。日本代表としてアテネ五輪にも出場し、WBCにも選出された。
入団当初から「石井一久を越える速球の持ち主」と大きな期待を集めていた。しかし当初は、確かに球は速いがありがちなノーコンで、せっかくの速球をなかなか活かせなかった。99年から一軍に出始め、中継ぎとして定着。この頃は制球を意識してややスケールダウンした印象だったが、経験を積むに連れ自信がついたのか、本来の力を徐々に発揮。特に02年は150km超を連発。抜群の安定感を見せ、同僚五十嵐と並び称される存在に。伸び悩みの原因だったノーコンも過去のものとなり、完全に一本立ちした。
五十嵐のストレートが刃物のようなイメージなら、石井はハンマーのような印象。スライダーも強力で、奪三振率が非常に高い。特に右打者への内角球はまともに当てるのも至難のボール。連打はまず期待できず、四球で崩れることもなくなった。
一時故障がちだったが、05年は五十嵐に代わって抑えを務め、見事なクローザー振りで37セーブを記録。02年から4年間の防御率は2点を切る安定感で、球界トップクラスのリリーフ左腕として君臨。
しかしポスティング騒動を経た06年以降、故障の長いトンネルに突入してしまった。左肩を痛めWBC遠征先から離脱・帰国。シーズンでも何度も離脱を繰り返し、06年は11試合のみの登板に終わった。オフに手術に踏み切り、長いリハビリを経て二軍での実戦復帰は08年の9月末。しかしこれも復活の足がかりとはならず、ついに4年間一軍から遠ざかることに。
昨年も状態は変わらず、ついにシーズン中現役引退を表明。引退試合が5年ぶりの一軍マウンドということになった。すでにかつての剛球復活は望むべくもなく、残念だがやむをえないところか。今季は育成コーチに就任することに。

石井 裕也

サイレントK、切れ勝負型

左投左打
横浜商工高〜三菱重工横浜硬式クラブ 中日05ドラフト6巡〜08途中、横浜08途中〜10途中、日本ハム10途中〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 横浜 35 0 2 0 0 14 45 1/3 28 3 40 16 2 0 12 2.38
09 横浜 28 0 0 6 6 3 25 1/3 26 4 18 11 1 0 12 4.26
10 日本ハム 13 0 0 0 0 5 10 2/3 8 0 8 2 1 1 3 2.53
11 日本ハム 39 0 3 1 0 9 34 1/3 27 1 22 11 0 0 5 1.31
通算 7年 166 0 12 11 6 40 191 171 13 153 79 7 4 70 3.30

先天性の難聴というハンデを抱えながら、プロ入りを果たした左腕投手。高校時代に話題となり、「サイレントK」の異名を取った。社会人を経て、即戦力として中日入団。
ドラフトの指名順位は低かったが、1年目開幕直後に一軍入り。2度目の登板で早くも初勝利を記録すると、次の登板でも勝利投手に。その後しばらくは僅差での登板が続いたが、徐々に捉まるようになって一軍定着とまではいかなかった。それでも3勝を挙げて上々のスタートを切った。
低め中心に集めて、切れで勝負するタイプ。奪三振はなかなか多く、異名に偽りはない。ややコースを意識しすぎて攻めきれず四球というのも目立ったが、力のあるところは見せた。
ルーキーイヤーに比べると、その後2年は登板数が伸びずやや印象薄。二軍暮らしが多くなった。07年終盤は光るところを見せるも、08年は開幕から二軍。しかし6月に横浜へ移籍して状況が大きく変わった。投手難に苦しむチームとあって、移籍後は貴重なリリーフ左腕として重用。そして自身もベストとも言える好投を見せ、セットアッパー格に浮上。35試合登板し14ホールドはチームトップ。負けが込むチームにあって目立ちはしなかったが、期待以上の活躍を見せた。
なかなか越えられなかった一軍定着の壁を、移籍によって突破した。しかし新ストッパーの期待がかけられた翌年は一転して急落。4月だけで6セーブと最初は良かったが、4月末にサヨナラ負けを喫すると、そこから悪夢の登板4連敗。抑えは山口となり、中継ぎに廻るも復調しきれず6月には二軍落ち。後半は立ち直りも見せたが、チームの大低迷もあってあまり目立てずに終わった。
主力から一転二軍スタートとなった10年は途中日本ハムへ移籍。6月に昇格すると目立たないながらもなかなかの好投を見せた。しかし夏場に離脱、復帰後すぐ腰を痛めるなど後半は故障に泣かされた。それでも昨年は復調。二軍スタートで前半は登板数も少なかったが、8月以降出番が急増。後半だけで28試合に登板し、3年ぶりの勝利を挙げるなど活躍。貴重なリリーフ左腕として再浮上に成功。
昨年は奪三振は控えめだったが失点少なく安定感があった。どちらかというとオーソドックスなタイプで、右打者相手のほうが強くワンポイントには不向き。1イニングを任せる起用がベストか。抑え失敗の不振を脱したが、過去いい状態が2年続かない傾向があるので今度はこれを持続したい。

石川 雅規

小兵エース、技巧派型

左投左打 新人王(02)、最優秀防御率(08)、ゴールデングラブ(08)
秋田商高〜青学大 ヤクルト02自由枠〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 ヤクルト 30 3 12 10 0 1 195 180 21 112 41 4 2 58 2.68
09 ヤクルト 29 3 13 7 0 0 198 1/3 203 25 84 28 6 4 78 3.54
10 ヤクルト 28 2 13 8 0 0 186 1/3 209 20 98 27 7 9 73 3.53
11 ヤクルト 27 1 10 9 0 0 178 1/3 168 18 127 42 5 1 54 2.73
通算 10年 281 18 107 90 0 3 1687 1819 191 930 279 48 41 692 3.69

ここまでほとんどのシーズンで二桁勝利を達成しているヤクルトの左腕エース。169cmと投手としては非常に小さな体ながら、常に一定以上の成績を残し続けている。
東都大学リーグで大活躍し自由枠でプロ入り。1年目から先発の一角を占める活躍を見せた。開幕からローテーションをしっかり守って安定。終盤になっても息切れせず、12勝の堂々たる成績で横浜の吉見を振り切り新人王を獲得した。2年目もジンクスなど関係なく12勝。すっかり安定戦力となり、故障などで活躍が2年続かない投手が多いチームにあってエース格とも目される存在に。
球速はそこそこの投手だが、軸となるスクリューも含めて変化球が多彩。入団当初からテクニックに秀で、打者との駆け引きがこなせるのが大きい。打者に的を絞らせない投球が身上で、球威ではなく切れと技術で抑える投手。
05,06年は開幕投手も務め、球団史上初、リーグでも江夏以来という、入団から5年連続二桁勝利の快挙を達成した。ただ勝ってはいるものの1年目から年々投球内容は悪くなり、負け数も多く防御率もいまいち。その不安は07年一気に表出した。開幕から乱調で2ヶ月勝ち星なし。前半わずか1勝に終わり、先発脱落、二軍落ちと散々な状態となってしまった。後半からようやく立て直したが、わずか4勝止まりで連続二桁勝利はストップ。入団後初めて規定投球回に届かず、もちろん自己ワースト、チームにとっても大誤算の一年に。
全く不本意なシーズンだったが、一方でシーズン終盤の安定感は数年なかった姿。この成果は翌年にはっきりと出た。開幕すると4月末までにいきなり5勝をマーク。2年ぶりの二桁勝利と同時に、ルイス(広)をかわして初の防御率タイトルを獲得。シーズン2点台というのが初めてであり、自己ベストで完全復活を遂げた。
一度派手に沈んだことで狂っていた部分を修正できたか。09年も安定した投球で右の館山と両輪の活躍。夏場好投しながら勝ちがつかない時期があったが、最後は3連勝で自己最多の13勝。10年はスタートに大きく躓き、開幕から6連敗。6月終了時点で6も負け越していたが、7月以降怒涛の巻き返しを見せ、シーズン終了まで実に11連勝。自己最多タイの13勝、最終的に勝ち越しと完全に立て直し。
シーズントータルでの安定感に優れた投手で、非常に確実な戦力。昨年は開幕から順調な投球で、5月に通算100勝到達。8月には5試合でわずか4失点という快投で、チームの投の柱として活躍を見せた。終盤チームの失速からペースが落ちたものの、最終的に4年連続9度目の二桁勝利到達。対横浜5戦4勝のほか、優勝を争った中日から3勝をマーク。
被安打が多めで完全に封じ込めるという投球ではないが、大崩れしない安心感が持ち味。今季も先発の柱として計算される存在。やや被本塁打が多く昨年はリーグ最多。狭いホームというのもあるが、神宮以外でも13試合で9被弾と少し多め。

一場 靖弘

未完の大器、乱調型

右投右打
桐生第一高〜明大 楽天05自由枠〜08、ヤクルト09〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 楽天 12 0 0 3 0 0 31 1/3 49 3 27 21 1 5 34 9.77
09 ヤクルト 9 0 1 5 0 0 37 2/3 48 10 27 16 4 2 33 7.89
10 ヤクルト - - - - - - - - - - - - - - -
11 ヤクルト 5 0 0 0 0 0 5 1/3 4 0 5 4 0 0 3 5.06
通算 7年 91 7 16 33 1 0 428 2/3 498 55 322 186 17 35 262 5.50

鳴り物入りでプロ入りするも低迷が続く速球右腕。エース格の投球を見せた時期もあったが、近年は二軍生活が長くなっている。
高校時代は正田(元阪神)の1年後輩で、2年生時に甲子園優勝を経験。大学では下級生時から主戦を張り、完全試合を達成するなどの活躍で「ドラフトの目玉」と注目を集めた。ところが「金銭授受問題」で進路が二転三転。散々の紆余曲折の末楽天入りとなった。
発足間もない楽天にとっては数少ない若手投手であり、また本来なら目玉であった大物。注目度も高く、期待は並々ならぬものがあった。しかしプロデビューは先発7連敗、未勝利のまま二軍落ちと苦い結果に。明大野球部を夏場に退部して実戦から遠ざかっていた影響も少なからずあった。勝てない焦りから力みも目立ち、制球を乱して早期に失点というケースが目立った。
それでも150kmの速球を持ち、持っている能力は一級品。二軍調整後は素質の片鱗を見せ、9月に待望の初勝利。経験を積んだ2年目は岩隈が故障ということもあって開幕投手に指名。チームでただ一人ローテーションを守り続けた。前半好調で奮闘したが後半息切れし失速。交流戦以降2勝8敗と大きく負け越し、トータルでも7勝、完全な脱皮には至らず。
どこか垢抜けないところの残る投手で、力んで投げ急いでしまう悪癖を持つ。下半身が粘れている時の投球はさすが一級品と思わせるのだが、悪い時はあっという間に滅多打ちを食らってしまいがち。立ち上がりに制球を乱すと修正できず、まさに荒削りという印象。
07年は開幕直後散々に打ち込まれ、故障で前半離脱。それでも復帰後の後半これまでにない安定感を見せ、一気に6勝を稼いだ。しかし08年は開幕から炎上続きで、5月上旬から長期の二軍調整。9月にようやく復帰も、先発ではまたも早期KO続き。とうとう一つも勝てないままシーズンを終えてしまった。
成長しかかってもそれが続かない。09年開幕直前にヤクルトへ移籍後もそれは変わらず、開幕直後の登板で5回零封で移籍初勝利。次の先発も敗れはしたが7回1失点の好投。しかしその後派手に打ち込まれて二軍落ち、再昇格も炎上続きで結局最初の1勝から5連敗でシーズン終了。印象を思い切り落とし、10年はとうとう一度も一軍に顔を出せないまま。昨年もシーズンのほとんどを二軍で過ごし、一軍登板はシーズン終盤の短い期間のみ。
一時腕を下げたりと試行錯誤しているが、最大の問題点はひとりでも走者を出すとガタガタに崩れてしまう精神的な脆さ。いい時は勢い任せで快投を見せても、躓くと転げ落ちるように崩れ、あまり考えている部分が見えてこない。二軍では昨年49イニングで被安打29と格上の投球を見せたが、一軍ではもう4年も結果を残せていない。そろそろ未完の大器とも言っていられない状況だが。

伊藤 義弘

速球派、タフネス型

右投右打
東福岡高〜国学院大〜JR東海 ロッテ08ドラフト(大・社)4巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 ロッテ 51 0 0 0 0 9 59 55 1 52 23 3 5 20 3.05
09 ロッテ 56 0 2 6 0 12 57 1/3 62 6 63 24 6 3 29 4.55
10 ロッテ 65 0 1 2 1 30 64 2/3 55 2 65 26 2 2 25 3.48
11 ロッテ 50 0 1 1 0 15 55 49 2 48 18 2 1 14 2.29
通算 4年 222 0 4 9 1 66 236 221 11 228 91 13 11 88 3.36

入団以来常に50試合以上の登板をこなすリリーフ右腕。様々な場面に登板し、チームの継投に欠かせない存在。
社会人から分離ドラフト4巡でロッテ入り。当時のチームは実績あるリリーフ投手がごっそり抜け、新たな陣容を整備する必要があった。そういう状況で伊藤にかかる期待も大きく、当然開幕一軍入り。開幕前には抑え候補という声もあった。ただやはりルーキー、序盤は登板ごとにムラが大きく、重要な場面を任せきるにはもう一つといった印象だった。それでもシーズン中盤ぐらいからはようやく落ち着きも出てきて、終盤はかなり好調、9月以降で防御率を1点近く良化させた。1年目から50試合に登板とタフなシーズンを過ごした。2年目はさらに登板数増加。ただ5月以降失点がかさんで防御率は4点台。6敗を喫するなど不安定なところは払拭できず。
しかし10年は大幅に存在感を増した。開幕からこれまで以上のフル回転で、新抑えの小林宏につなぐ存在として定着。フルシーズン活躍を続け、自己最多・チームトップの65試合登板、同じくチームトップでリーグ4位の30ホールドを記録。リリーフ陣の中心的存在となった。シーズン最後の登板ではプロ初セーブも記録。
150kmに迫るスピードとスライダーが武器の速球派。奪三振が多く非常に力強い投球が持ち味。コンスタントに投入できるタフな投手で、接戦となるとかなりの確率で登場する。ただ多少力任せなところも見られ、好不調の振幅が大きい面も。
昨年も主力リリーフとしてシーズン通して活躍。新加入のロサとともに薮田につなぐ役割、及びビハインドでも僅差なら登板し、4年連続の50試合登板となった。全体的な水準が上がった中で伊藤の防御率も大幅に改善され、自身初の2点台。
年々成績は向上しており、もうすっかりリリーフの柱的存在。力でグイグイ押しながらもここまでタフな投球を持続している。10年は少し投げすぎという印象もあったが、ロサの加入で多少負担は軽減されたか。今季も重要な戦力。

糸数 敬作

先発候補、技巧派型

右投右打
中部商高〜亜大 日本ハム07ドラフト(大・社)3巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 日本ハム - - - - - - - - - - - - - - -
09 日本ハム 13 2 4 5 0 0 71 53 8 43 27 8 0 36 4.56
10 日本ハム 8 0 2 2 0 0 36 1/3 38 10 17 10 4 0 27 6.69
11 日本ハム 5 1 2 1 0 0 26 33 2 14 3 5 0 13 4.50
通算 5年 26 3 8 8 0 0 133 1/3 124 20 74 40 17 0 76 5.13

先発の一角を狙うサイドハンド右腕。3年目の09年初めての一軍で結果を残し、ローテーション入りが期待される存在に。
大学3年までは無名に近い存在だったが、最後のリーグ戦で5勝の活躍でMVPに。急激に評価を上げ、大・社ドラフト3巡で日本ハム入り。当初の2年は完全に二軍だったが、1年目7勝を挙げるなど好成績を残していた。
転機となった09年はサイドスローに転向。5月中旬に初の一軍昇格を果たした。最初のリリーフ登板では失点も、続く先発では敗れたものの6回3失点と及第点の投球。その後しばらくローテーション入りすることに。スタートから3連敗を喫していたが、6月末にプロ初勝利をマーク。夏場二軍落ちの後、8月末に再昇格するとそこから先発で3勝。完投勝利も記録し、上向いた状態でシーズンを終えた。ポストシーズンにも先発登板し、1年で存在感急上昇。
以前は140km台後半の速球を持っていたようだが、横手に変えてからは平均130km台前半と「遅い」タイプの投手。コースの内外を揺さぶって打たせて取る技巧派の投球に。それほど球威は感じさせず、制球も抜群にいいという訳でもなかったが、打ちづらいのか被打率はかなり優秀だった。
この活躍をステップにシーズン一軍定着が期待されたが、ここ2年は停滞。10年は開幕7戦目で先発登板も7失点で敗戦投手となり、しばらく二軍調整。6月再昇格も、今度は脇腹を痛めて離脱と前半さっぱり。8月中旬に復帰して先発2勝を挙げたが、最後の2度はピリッとしない投球だった。昨年は6月頭に先発してすぐに抹消、7月頭に勝利を挙げてまた抹消と前半は飛び飛びの登板。再々昇格した8月中旬プロ初完封勝利を記録したが、続く登板では3回KOされ以降は二軍とさらに登板数が減った。
谷間要員としてそこそこの印象は残したが、空席の先発6番手に納まりきることは出来なかった。被打率3割超はやはり物足りないところで、球威の不足をカバーする制球力がほしいところ。左打者対策も必要。

今井 啓介

若手右腕、先発期待型

右投右打
中越高 広島06ドラフト(高)2巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
09 広島 9 0 1 3 0 0 45 2/3 38 4 28 15 1 1 19 3.74
10 広島 11 0 0 4 0 0 37 1/3 42 7 24 18 3 1 22 5.30
11 広島 11 0 1 2 0 0 30 1/3 34 0 22 7 3 1 10 2.97
通算 6年 31 0 2 9 0 0 113 1/3 114 11 74 40 7 3 51 4.05

ここ3年毎年チャンスを与えられ、一軍定着を狙う若手右腕。なかなかもう一歩突き抜けられないが、なかなか期待の大きい投手。
高校時代甲子園の舞台には無縁だったが、その素質を高く評価され高校生ドラフト2巡で広島入り。当初の3年間は二軍で過ごした。1年目は13イニングで10、2年目18イニングで18と酷く四球が多く苦しんだが、3年目は18試合すべて先発し6勝をマーク。まだ制球に不安は残すも、チームで唯一規定投球回到達と二軍の主力投手に。
そして4年目ファームでは1勝9敗と大きく負け越したものの、防御率向上、四球も大幅に減り、内容を良化させた。夏以降は一軍に初昇格。先発で多く起用され、9月にプロ初勝利を記録。期待株として脚光を浴びるように。
癖のないオーバースローから140km台後半のスピードを持ち、高校時代から決め球として自信を持っていたスライダーを軸とする本格派タイプの投手。入団当初苦しんだ制球は随分まとまり、先発入りを期待される存在に。
ただその後2年はやや停滞状態。10年は肘を痛めて少し出遅れ、復帰後も昇降格を繰り返すエレベーター状態。登板数こそ前年を上回ったものの、7先発を含む11登板で4敗と結果を残せず。昨年は二軍でも振るわず一軍登板は8月末になってから。
ただ9月下旬に先発で2年ぶりの勝利を記録し、前年より随分内容が良くなった。一軍登場から3シーズンを経過し、25歳となる今季はそろそろ二軍を卒業したいところ。先発でいくなら昨年の対左被打率3割7分は絶対に改善すべきポイント。

今村 猛

若手右腕、期待株型

右投右打
清峰高 広島10ドラフト1位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
10 広島 2 0 0 1 0 0 4 7 1 0 6 1 0 7 15.75
11 広島 54 0 3 8 2 13 94 97 10 76 30 1 6 49 4.69
通算 2年 56 0 3 9 2 13 98 104 11 76 36 2 6 56 5.14

高卒2年目で一軍登板急増、セットアッパー役も任された若手右腕。ドラフト1位入団で、将来の主力と大きな期待を受ける存在。
好投手として早くから知られていたが、センバツで5試合1失点の快投を演じ優勝投手に。すでに大器と注目されていた菊池雄星(西)に決勝で投げ勝ち、一気にその名が知れ渡った。ドラフトで広島が1位指名しプロ入り。
1年目はファーム中心も後半には一軍登板も経験。2試合の先発登板はいずれも3回持たずKOと苦いものだったが、二軍では4勝をマーク。2年目の昨年は開幕前から一軍の先発候補と目され一軍スタート。すると負傷降板したジオに替わったリリーフ登板でプロ初勝利を挙げ、以降しばらく先発起用。ただ3連敗と結果を残せず、6月以降はリリーフに廻った。
高卒2年目ながら線の細さは感じさせず、すでに体は充分。ゆったりとしたフォームからストレートとスライダーを軸に攻める。力で牛耳るではなく、幅広さを感じさせる総合力タイプ。
先発ではまだスタミナが足りないのかやや球威に物足りなさも見せたが、リリーフに廻ってからはスピードも向上。7月には好投を続け完全に一軍定着、後半は大幅に登板数が増えた。結果54試合に登板しリリーフの一角を占める存在に。サファテ離脱の10月には抑え役として2セーブも記録。
ただ8月下旬立て続けに敗戦投手となるなど終盤はバテ気味。層の薄さからどうしても使い詰めになりがちで、いい状態は長く続かなかった。このままリリーフに専念するか、それとも先発に再挑戦するか、どちらにせよハードだった昨年の疲労はしっかり取っておきたい。

林 昌勇(イム・チャンヨン)

豪腕サイド、クローザー型

右投右打
ヤクルト08〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 ヤクルト 54 0 1 5 33 3 51 55 6 50 9 2 1 17 3.00
09 ヤクルト 57 0 5 4 28 5 57 40 4 52 19 2 2 13 2.05
10 ヤクルト 53 0 1 2 35 6 55 2/3 32 3 53 16 2 1 9 1.46
11 ヤクルト 65 0 4 2 32 4 62 1/3 40 2 69 22 3 3 15 2.17
通算 4年 229 0 11 13 128 18 226 167 15 224 66 9 7 54 2.15

ヤクルト不動のクローザーとして君臨する投手。08年の入団以来守護神として活躍を続けている。
韓国では13年のプロキャリアで通算104勝168セーブ、防御率タイトルを一度、セーブ王を二度獲得した実績を持つ。シドニー五輪に出場するなどトップレベルの投手として活躍し、04年にFAで日本移籍が噂されたことも。
輝かしい実績を誇るが、04年の36セーブを最後に以降3年は故障もあって成績不振。ヤクルト入りした頃は「ピークは過ぎた」とも見られ、その能力には不安もあった。しかし開幕するやその不安は一掃。抑えを任され開幕から5月上旬まで11試合連続無失点、セットアップ役の押本や松岡とともに新たな勝利パターンの継投の柱となった。オールスターまでに25セーブを稼ぎ、最終的にチームでは3年ぶりの30セーブ突破。高津の衰え、五十嵐・石井の故障で不安定だったクローザーに定着。
魅力はなんといってもサイドスローから繰り出される150km超の剛速球。ナチュラルにシュートする独特の軌道で、右打者には手元に食い込む球質。経験豊富なだけに制球も良く四球は少ない。三振が奪え、まさに抑え向きという印象。
翌年も7月に入るまで自責点0という快投。ただ前年に続き終盤息切れしてしまい、8月以降だけで3敗、シーズン自責点13の内12をこの2ヶ月に記録。腰痛で一時離脱もあり、確実と思われた30セーブに届かなかった。シーズンのスタミナに不安を残したが、10年はそれを払拭。8月以降は15セーブを挙げて好調チームを後押し。タイトルには届かなかったものの、自己最多の35セーブを挙げた。一桁の失点で防御率は1点台前半を記録。
契約切れで移籍も噂されたが昨年も残留。例年通りスタートは非常に良く、好調なチームの抑えとして活躍。8月腰痛で一時離脱があったものの、ほぼフルシーズン働き2年連続3度目の30セーブ突破。登板数は初めて60を超えた。
サイドながら左打者に強く、もう35歳のベテランだがスピードで牛耳る投球は健在。毎年短期間離脱があるとはいえ4シーズン安定した活躍を続けており、今季も欠かせない戦力。昨年中日・巨人に少し相性が悪かった点は改善したいところ。

岩隈 久志

復活エース、変則速球型

右投右打 最多勝(04,08)、最優秀勝率(04,08)、ベストナイン(04,08)、最優秀防御率(08)、沢村賞(08)、MVP(08)
堀越高 近鉄00ドラフト5位〜04、楽天05〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 楽天 28 5 21 4 0 0 201 2/3 161 3 159 36 4 4 42 1.87
09 楽天 24 5 13 6 0 0 169 179 15 121 43 6 3 61 3.25
10 楽天 28 4 10 9 0 0 201 184 11 153 36 12 1 63 2.82
11 楽天 17 2 6 7 0 0 119 106 6 90 19 5 1 32 2.42
通算 12年 226 48 107 69 0 0 1541 1514 109 1195 342 58 23 557 3.25

楽天のエース右腕。近鉄時代に彗星のごとく現れ、それ以降瞬く間にエースに駆け上った。2度の最多勝など華々しい実績を誇る。
高卒2年目の01年終盤に登場し、伸びのある速球で4勝を記録、チームの優勝に勢いをつけた。翌年は勝ち星を倍にし8勝、さらに03年は一気に二桁突破の15勝。急成長の勢いはとどまるところを知らず、04年は開幕から破竹の快進撃で先発12連勝を達成。2年連続の15勝で最多勝に輝き、防御率もタイトル寸前まで向上。二十代前半の若さながら、リーグを代表する投手にのし上がった。
すらっとした細身ながら、完投能力は非常に高い。肘のしなりが抜群の投手で、腕が体に巻きつくようにスイングされる。制球力が非常に高く、コーナーサイドに切れのいい速球と鋭いスライダーを小気味よく投げ込む。総合的に隙の少ない完成度の高い投手。
04年末球団合併に際して志願の楽天入り。だがここからしばらく不振に陥ることに。チーム状況から勝ち星が減る事は当然予想されたが、自身の出来も以前ほどではなかった。蓄積疲労からか切れが鈍り、05年は被打率3割超で5点近い防御率、不安定な状態で15敗を喫してしまった。そして翌06年からは故障で長期離脱。肩を痛めて一時は球速ががた落ちする苦難を味わった。復帰して07年は開幕投手となるも、前半は依然体調不安な状態で再三離脱。
移籍以降精彩を欠き続けていたが、07年後半で4勝、復調の足がかりを掴むと、08年そのポテンシャルを一気に解き放った。開幕から安定感抜群の投球を展開し、5月から破竹の8連勝で4年ぶりの二桁勝利は6月中に早々と到達。7月に3敗目を喫してからまたも8連勝を記録し、ついに大台の20勝に到達。2度目の最多勝は85年の佐藤義(阪急)以来実に23年ぶりという21勝の大記録。もちろん勝率1位、そして1点台の防御率を最後まで維持し、見事な投手三冠に輝く最高のシーズンとなった。
復活というよりレベルアップという印象。近鉄時代はシーズン後半に失速することが多く体力不安を感じさせたが、それもなくシーズン通して鉄壁のままだった。この難攻不落ぶりが評価されたか、選考基準を満たしていたダルビッシュを抑えて沢村賞にも選出。
ここまでの圧倒的ペースではないものの、これ以降もエースに君臨。WBCでも活躍した09年は前半肘痛で1ヶ月離脱するなどしたが、7月末から6連勝など後半立て直して13勝。投球内容は前年より見劣りはしたが、充分存在感を示した。10年は開幕連敗スタートもその後4連勝。チームが下位に沈んで勝ち切れない試合も多かったが、フルシーズン働き3年連続5度目の10勝をマーク。通算100勝も達成。
オフにポスティングでメジャー移籍を目指したものの、入札後交渉決裂し一転残留。ただ昨年は影の薄いシーズンだった。開幕から3連勝と最初は良かったが、5月中旬肩の違和感で降板しそのまま抹消、2ヶ月の戦線離脱に。復帰後も本調子という印象ではなく、9月以降は4連敗。4年ぶりに二桁に届かず、5年ぶりの負け越しに終わった。
前年果たせなかったメジャー移籍のためオフにFA宣言。不安は再三長期離脱を繰り返している故障の多さで、終盤の投球がらしくないものだった点も気になるところ。

岩嵜 翔

先発台頭、期待株型

右投右打
市船橋高 ソフトバンク08ドラフト(高)1巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 ソフトバンク 1 0 0 0 0 0 3 7 0 1 0 0 0 3 9.00
09 ソフトバンク 1 0 0 1 0 0 4 1/3 7 0 1 1 0 0 3 6.23
10 ソフトバンク 6 0 0 3 0 0 22 1/3 30 2 9 9 1 0 20 8.06
11 ソフトバンク 13 2 6 2 0 0 79 1/3 70 4 33 22 5 4 24 2.72
通算 4年 21 2 6 6 0 0 109 114 6 44 32 6 4 50 4.67

4年目の昨年先発の一角に食い込んできた若手右腕。将来の主力と期待されていた存在が頭角を現してきた。
高校時代一時サイドスローにしていたが、オーバーに戻して球速が向上。オリックス入りした山崎正との二枚看板で3年時夏に甲子園出場。高校生ドラフトでは中田(日)の外れ1巡だったものの、中日とソフトバンクが競合指名。抽選の末ソフトバンク入りとなった。
188cmの長身と肩の柔軟さから「斉藤和巳の後継」と期待され、1年目から二軍で1点台の防御率で5勝の好成績、ファーム選手権では完投勝利と活躍。一軍でも打ち込まれたものの先発登板を記録した。ただその後2年は二軍では安定した結果を残すも一軍の壁を突破できず。先発機会を与えられるも4連敗と食い込めずにいた。
しかし4年目の昨年ついに一軍台頭。6番目の先発に食い込み、なかなか手にできなかった初勝利を5月半ばに記録。あくまで先発6番手の「候補」という立場から常時一軍ではなく、登板間隔はまばらだったが、ここから8月中旬にかけて初完封を含む5連勝を記録。終盤少し乱れた後最後の登板で勝利し、一気にシーズン6勝を挙げた。
転機は昨オフ派遣されたプエルトリコのウインター・リーグ。ここで10試合8勝の結果を残し、最多勝に最優秀投手受賞。所属したチームから帰国予定を延期して年明けのチャンピオンシップにも出場して欲しいと頼まれるほどの大活躍を見せた。自信を掴むと同時に、ここで習得・武器としたツーシームが大きな財産に。これまで速さはあるものの球筋が素直すぎて空振りが取れず、一軍レベルでは決め手不足が顕著だったが、打たせて取る投球スタイルを確立したのが台頭の原動力となった。昨年取ったアウトの半数近くがゴロによるもの。
まだ相手を選んで起用されており、昨年対パの登板は3勝ずつを挙げた楽天と西武戦のみ。まだ運と統一球に恵まれた面も否めないが、最後の登板では力強さも垣間見せ、今季さらなる飛躍が期待される。次は常時一軍のローテーション入りを狙いたい。

岩崎 哲也

トルネードサイド、中継ぎ型

右投右打
行田工高〜国士舘大〜三菱重工横浜硬式野球クラブ 西武07ドラフト(大・社)5巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 西武 20 0 2 0 0 0 21 32 2 10 4 5 0 13 5.57
09 西武 27 0 2 4 0 9 26 28 2 15 13 2 1 13 4.50
10 西武 1 0 0 0 0 0 1 2/3 4 1 2 0 1 0 2 10.80
11 西武 2 0 0 0 0 0 2 1/3 5 0 0 1 1 0 1 3.86
通算 5年 105 0 7 5 2 22 105 1/3 112 10 60 35 14 2 46 3.93

1年目から50試合以上に登板、即戦力となったサイドスロー右腕。チームトップの登板数で貴重な戦力となった。
身長190cm、その大柄な体を強烈に二塁方向にひねる、いわゆる「トルネード投法」で投げ込む。相手、特に右打者には威圧感を与えるフォームで、長いリーチのサイドスローも強烈な個性。スライダーは非常に変化量が大きく、打者が思わず手を出すととんでもないゾーンにまで逃げていくこともしばしば。
開幕一軍入りを果たし、序盤から登板機会は非常に多かった。当初こそ不安定さも目に付いたが、5月以降は大きく安定。オールスター以降は1点台の防御率で抑え込む活躍を見せた。チームでは三井に次ぐホールドを記録し、重要なリリーフの一角に定着。
中継ぎ陣が手薄と言われるチームにとっては非常に大きな補強となった。だがこれをピークに、これ以降はどうもパッとしない。08年は開幕から不調そのもので失点がかさみ、登板数激減、防御率5点台と精彩を欠いたままシーズン終了。翌年は前半失点こそしないものの走者を出すことが多く、登板機会の増えた夏場は失点も増えて不安定な投球に終始。信頼を掴めないまま終わってしまった。
どうも慣れられてしまったのか、以前ほど相手が嫌がらなくなった。そして10年は一気に落ち込み、シーズンのほとんどを二軍暮らし。唯一の一軍マウンドは打者10人に4安打1ホーマーとボロボロ。昨年もあまり変化はなく、5月に2度登板、失点こそ1だったが、打者12人に5安打2四死球と滅多打ちに近い状態。
1年目の活躍は見事だったが、以降は落ちる一方でこの2年は全く戦力にならず。上がり目なしと見られたか戦力外を通告されてしまった。まだ働ける年齢だが、近年の印象が悪いのは厳しいところか。

岩瀬 仁紀

鉄壁左腕、守護神型

左投左打 最優秀中継ぎ(99,00,03)、最多セーブ(05,06,09,10)
西尾東高〜愛知大〜NTT東海 中日99ドラフト2位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 中日 51 0 3 3 36 5 49 55 2 41 10 0 0 16 2.94
09 中日 54 0 2 3 41 1 46 2/3 41 2 34 13 2 2 11 2.12
10 中日 54 0 1 3 42 3 48 47 1 41 13 2 1 12 2.25
11 中日 56 0 0 1 37 7 48 2/3 50 1 45 10 2 0 8 1.48
通算 13年 746 0 50 35 313 26 769 659 30 695 178 21 12 173 2.02

輝かしい実績を誇るリリーフ左腕。絶対の武器であるスライダーで打者を牛耳り、入団からここまで常に50試合以上登板という鉄腕。中日投手陣を支える重要な存在で、紛れもない守護神。
1年目の99年からリーグトップの65試合登板で10勝という破格の成績を残してデビュー。MVP級の活躍でチーム優勝の原動力にもなった。疲れを懸念する周囲の不安を吹き飛ばすように翌年もリリーフで10勝。接戦に非常に強く、重要度では1イニング限定のクローザー以上の存在だった。3度の中継ぎタイトルに輝き、日本代表にも文句なしの選出。
スリークォーターで低いところから腕が出てくるため、スライダーは真横にゾーンを横切るような球筋。左打者にはもちろん、右打者にも鋭く食い込んで捉えづらい球種で、スピードも充分にある。昨今主流の、言うなればよくいるタイプではあるのだが、滅多に高めに浮かない制球力も含めてすべての面でハイレベル。このタイプの完成形といっても過言ではない。
長年セットアッパーを務め、大塚が抜けた04年からストッパーに廻った。この年序盤は疲労からかスライダーがあまり切れず、これまでになく打ち込まれる場面が目立った。それでも不調は前半だけで、後半は非常に安定。翌05年は開幕から万全で、絶対の守護神として君臨。46セーブを挙げ、98年の佐々木(横)を抜いてシーズン新記録を樹立した。被本塁打0というのも凄まじい。
不調が長引かない、引きずらないのはリリーフとして理想的。これ以降鉄壁のクローザーとして君臨し、3年連続40セーブの記録樹立。ただ08年は、若干その輝きに翳りもちらついた。絶好スタートも5月中旬以降はやや失点が目立つように。五輪で散々に打ち込まれた印象が強いが、シーズンでも以前ほどの安定感ではなく、3点近い防御率は4年ぶりで、通算防御率も2点台となった。 しかし確かに衰えを見せながらも大崩れはせず、引き続きクローザーに君臨。09年は体調不良で終盤登板しない時期もあったが、自身4度目、両リーグ唯一の40セーブ到達で3年ぶりにタイトル奪還。そして10年も変わらぬペースでセーブを量産し、またも40セーブ突破で2年連続4度目のタイトルに輝いた。
昨年は序盤10登板で6失点と不安定なスタート。それでも抑えとして登板を重ね、6月に通算セーブ日本記録更新。37セーブを挙げ、通算では前人未到の300セーブ突破。防御率も最終的に5年ぶりの1点台としてシーズンを終えた。
ただ右打者に3割打たれた前年に続き、確実に昔のボールではなくなっている。抑えてはいるものの昨年の被打率は平凡な数字で、被出塁率3割はクローザーとしてかなり物足りないもの。浅尾の信頼感が高まっており、配置が逆になるケースも見られた。そろそろ限界かと言われつつも数年経っているが、果たして今季は。

岩田 稔

先発左腕、故障多発型

左投左打
大阪桐蔭高〜関大 阪神06希望枠〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 阪神 27 2 10 10 0 0 159 1/3 168 5 101 50 11 7 58 3.28
09 阪神 16 4 7 5 0 0 110 2/3 99 3 103 27 8 4 33 2.68
10 阪神 - - - - - - - - - - - - - - -
11 阪神 25 2 9 13 0 0 169 121 7 133 45 8 6 43 2.29
通算 6年 73 8 26 30 0 0 455 1/3 405 16 344 134 29 21 145 2.87

先発の一角を計算される左腕。3年目の08年に開花し、主力投手の一人となった。
大学から希望獲得枠で06年阪神入り。高校時代に発症した糖尿病を抱える選手としても話題となった。ただその病気以外にも故障が多く、アマ時代は腰、プロに入ってからは肘を痛め、1年目は一軍登板1度、二軍でも6試合にしか投げられなかった。即戦力とはいかず、07年も一軍定着は果たせなかったが、しかし二軍では成績向上。
そして08年はオープン戦で抜群の結果を残し、ついに一軍進出。開幕2戦目に先発しプロ初勝利を挙げるとそこから5月末までに5勝を挙げ、この時点で防御率1点台でリーグトップ。抜群の安定感を見せ、やや不安だった先発陣の新星として大活躍を見せた。6月以降失速して成績を大きく落とし10敗を喫してしまったが、10勝到達で一気に一軍主力投手に定着。
スピードもまずまずあり、スライダー、カーブ、シュートと多彩な球種を織り交ぜる。入団当初は制球に不安を抱えていたが、これが大きく向上した。特にスライダーは鋭く大きく曲がる一番の武器。
ただどうにも故障が付きまとう投手で、さらなる飛躍を期待された翌09年はWBCで肩を痛めてしまい、シーズンには大きく出遅れ。復帰した夏以降2完封を含む4完投、後半だけで7勝と力のあるところを見せたが、10年はキャンプ中に肘を痛めまたも離脱。手術に踏み切ったためシーズンはリハビリに費やし、実戦登板のないまま終えた。
それでも無事ならば大きな戦力となる存在で、故障癒えた昨年は開幕からローテーションを維持。いきなり3連敗スタート、夏場にも4連敗など勝ち星には恵まれなかったものの、安定した投球をシーズン通して見せた。打線の援護に恵まれなかったため10勝には一歩届かず、二桁敗戦も喫してしまったが、リーグ5位の防御率に抑え復活を果たしたシーズンとなった。
1点以内に抑えながら勝てなかったゲームが3試合あり、この勝敗は逆でもおかしくない内容だった。実力は充分で、故障さえ出なければ確実に中心投手。中日・横浜には防御率1点前後とほとんど打たれなかった一方、3戦3敗の広島戦のみ被打率が3割を越えていた。