広島東洋カープ

11 福井 優也

先発右腕、即戦力型

右投右打
済美高〜早大 広島11ドラフト1位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
11 広島 27 2 8 10 0 0 146 1/3 133 14 120 68 8 11 67 4.12
通算 1年

1年目からローテーション定着を果たし即戦力となったドラフト1位ルーキー。シーズン通して先発で投げ、前田健・バリントンに続く存在として活躍。
高校時代早くからエースとして活躍し、センバツ優勝、夏準優勝の華々しい実績を残す。高校生ドラフトで巨人から4巡指名を受けるもこれを拒否。一浪して早大に進んだ。大学では同期となった斎藤(日)、大石(西)の陰に隠れる形となっていたが、ドラフトで広島が1位指名しプロ入り。史上初めて同一チームから3投手が1位指名されることとなった。
層の薄いチームで期待は大きく、1年目から開幕ローテーション入り。チーム6戦目に先発登板し7回2失点で初勝利と順調なスタートを切った。その後もローテーションを守り続け、最終的にシーズン8勝をマーク。10敗と負けが先行し防御率は4点台だったものの、離脱なくシーズンを過ごし、故障のあった斎藤・大石以上の即戦力となった。
140km台中盤から150kmの速球を軸に、スライダー、フォークを交えるオーソドックスな速球派投手。フォームも比較的オーソドックスで、個人的にはチームOBの佐々岡に少し似た印象。
貴重な先発要員となったが、課題も数多い。リーグ最多失点はともかく、四球・暴投もリーグ最多。粗削りな面を残し、少しボールが抜けて高めに浮く傾向も見られた。ともあれ充分一軍でやっていけることを実証し、今季はさらにステップアップを期待される。

14 篠田 純平

大型左腕、先発型

左投左打
前橋商高〜日大 広島08ドラフト(大・社)1巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 15 0 3 4 0 0 64 2/3 71 5 41 20 1 0 31 4.31
09 広島 13 1 2 1 0 1 39 2/3 29 3 29 8 0 0 8 1.82
10 広島 34 0 6 6 0 4 108 2/3 119 13 58 44 4 7 54 4.47
11 広島 17 1 5 7 0 0 93 2/3 94 8 49 28 0 5 43 4.13
通算 4年 79 2 16 18 0 5 306 2/3 313 29 177 100 5 12 136 3.99

先発定着を期待される左腕。ただ好不調の波が激しく、ここまでなかなか一軍定着しきれていない。
大学屈指の左腕として、大・社ドラフトでは外れ1巡ながら3球団が競合、抽選の末広島が獲得した。投手陣整備が最重要課題のチームとあって、期待はもちろん即戦力。1年目は5月頭に一軍昇格・即日初登板。2度目の登板は先発で、6回途中1失点でプロ初勝利を挙げた。だがその後は打ち込まれ、6月先発で一死も取れずに降板するとしばらく二軍落ち。前半は期待を裏切ったが、8月中旬に再昇格し以降2勝。後半は防御率3点台とかなり落ち着きを見せた。即戦力というには物足りないが、光るところも見せたスタートとなった。
186cmの長身左腕で、角度のある速球とスライダーが武器。視力が悪くナイターでは辛いということで、後半からは度の入ったサングラスを着用するようになった。
高橋が抜けた09年は開幕からローテーション入りし、2度目の登板でプロ初完封勝利。4月2勝といいスタートを切ったが、ここで肩を痛めるアクシデント。予想以上に回復が遅れ、結局4ヶ月以上の長期離脱となってしまった。故障に泣いたが、それでも9月復帰後はリリーフで9試合に登板し、復調をアピール。
3年目の10年は最初の先発登板でKOされると、そこからしばらくはリリーフに。好調な時期もあったが、5月後半立て続けに派手に失点して二軍落ち。6月末に再昇格すると今度は先発で起用され、連勝してローテーション入り。出入りの激しいところはあったものの先発復帰後は4勝をマーク、自己最多のシーズン6勝を挙げ、投球イニングも初めて100を突破。
だがこの勢いをつなげられず。開幕ローテーション入りの昨年は当初好調も、5月立て続けに早期KOされ二軍落ち。7月再昇格し3勝を上乗せしたが、9月に入るとまた失点がかさみ、さらに故障で離脱。シーズン5勝、防御率は4点台と停滞のシーズンに終わった。
全く相手を寄せ付けない快投を見せたかと思えば、最初から悪く立ち直れないままという試合もあり、どうも安定感に欠ける。昨年故障に泣いた齊藤とともに貴重な先発左腕として期待は大きく、そろそろチームとしても一本立ちをして欲しいところ。5年目となる今季はフルシーズンの一軍を望まれる。

16 今村 猛

若手右腕、期待株型

右投右打
清峰高 広島10ドラフト1位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
10 広島 2 0 0 1 0 0 4 7 1 0 6 1 0 7 15.75
11 広島 54 0 3 8 2 13 94 97 10 76 30 1 6 49 4.69
通算 2年 56 0 3 9 2 13 98 104 11 76 36 2 6 56 5.14

高卒2年目で一軍登板急増、セットアッパー役も任された若手右腕。ドラフト1位入団で、将来の主力と大きな期待を受ける存在。
好投手として早くから知られていたが、センバツで5試合1失点の快投を演じ優勝投手に。すでに大器と注目されていた菊池雄星(西)に決勝で投げ勝ち、一気にその名が知れ渡った。ドラフトで広島が1位指名しプロ入り。
1年目はファーム中心も後半には一軍登板も経験。2試合の先発登板はいずれも3回持たずKOと苦いものだったが、二軍では4勝をマーク。2年目の昨年は開幕前から一軍の先発候補と目され一軍スタート。すると負傷降板したジオに替わったリリーフ登板でプロ初勝利を挙げ、以降しばらく先発起用。ただ3連敗と結果を残せず、6月以降はリリーフに廻った。
高卒2年目ながら線の細さは感じさせず、すでに体は充分。ゆったりとしたフォームからストレートとスライダーを軸に攻める。力で牛耳るではなく、幅広さを感じさせる総合力タイプ。
先発ではまだスタミナが足りないのかやや球威に物足りなさも見せたが、リリーフに廻ってからはスピードも向上。7月には好投を続け完全に一軍定着、後半は大幅に登板数が増えた。結果54試合に登板しリリーフの一角を占める存在に。サファテ離脱の10月には抑え役として2セーブも記録。
ただ8月下旬立て続けに敗戦投手となるなど終盤はバテ気味。層の薄さからどうしても使い詰めになりがちで、いい状態は長く続かなかった。このままリリーフに専念するか、それとも先発に再挑戦するか、どちらにせよハードだった昨年の疲労はしっかり取っておきたい。

17 大竹 寛

エース候補、バランス型

右投右打
浦和学院高 広島02ドラフト1巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 28 3 9 13 0 1 171 189 19 99 67 5 6 73 3.84
09 広島 29 5 10 8 0 0 185 2/3 177 10 127 60 4 10 58 2.81
10 広島 3 0 1 0 0 0 18 22 2 9 10 2 1 10 5.00
11 広島 6 0 1 1 0 0 31 2/3 28 1 15 7 0 0 6 1.71
通算 10年 197 14 53 63 17 1 960 2/3 973 107 721 387 30 43 429 4.02

長らくエース候補と呼ばれ続ける先発右腕。バランスの良い本格派として高校時代から話題になった投手で、入団当初から大いに期待された投手。
入団年から前評判通りの完成度を絶賛されたものの故障でやや出遅れ。しかし台頭は早く、2年目の03年に一軍初登板、プロ初勝利も記録。3年目の04年は開幕から一軍に名を連ね、不調の永川に代わって途中から抑えに座り、17セーブを挙げて主力投手の仲間入りを果たした。
150km前後の速球に加えて、切れのいいスライダーがかなりの威力。後にはシュートやチェンジアップの割合も増え、投球の幅を広げていった。期待された若手投手の伸び悩み、故障禍の多かったチームだけに、次代の主軸投手として期待を集めた。
抑えは1年のみで、翌年以降は先発へ。ただここからどうにも歯がゆい状態が続いた。05年は二桁勝利を達成するも、防御率は5点台の後半、失点100超はリーグでは13年ぶりの記録だった。翌年も開幕から6連敗を喫し、5点近い防御率でリーグワーストの13敗。あまりにも波が激しく、立ち上がりいきなり失点、悪い時は序盤早々にKOというケースが目に付いた。こういった課題は本人も自覚していたようで、07年は「勝てる投手への脱皮」を宣言。公約通り春先は安定した投球を見せたが、長続きはせず5月以降は5連敗を喫するなどまた不安定な状態に。終盤復調も二桁には一歩届かず9勝止まり。黒田が抜けた08年は開幕投手を任されるも、6月までに2勝9敗と大きく負け越し。後半巻き返したものの、またも9勝で二桁に届かず。
ローテーションは維持し続けていても、もう一歩突き抜けないという印象が強かった。しかし8年目を迎えた09年、ついに一皮むけてきた。4月末から5連勝、その間の失点がわずか2と抜群の快投。6月大きく乱れて3連敗を喫したが、7月以降は立て直してきた。自己最多の5完投で4年ぶりに二桁勝利到達。2点台の防御率は自身初めて。
ようやく壁を越えた印象だったが、その後2年故障に泣くことに。10年はキャンプ中に肩を痛め開幕に出遅れ。6月一軍復帰し先発勝利も挙げたが、見切り発車の色濃い復帰で3試合投げたところでまた故障発生。今度は長期の離脱となり、以降実戦登板なくシーズンを終えた。昨年5月後半になってようやく一軍復帰。ところが2度目のマウンドで打球が直撃、右手小指の骨折でまたも長期離脱を強いられることとなった。
運にも見放されたような格好だが、終盤10月復帰を果たし、最後の登板で勝利投手に。今季は今度こその復活を期待される。大竹がシーズン通しての戦力となればチームの投手陣も随分楽になる。

18 前田 健太

若手エース、緩急型

右投右打 最多勝(10)、最優秀防御率(10)、最多奪三振(10,11)、ベストナイン(10)、ゴールデングラブ(10)、沢村賞(10)
PL学園高 広島07ドラフト(高)1巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 19 1 9 2 0 0 109 2/3 103 10 55 35 3 0 39 3.20
09 広島 29 3 8 14 0 0 193 194 22 147 29 3 2 72 3.36
10 広島 28 6 15 8 0 0 215 2/3 166 15 174 46 7 2 53 2.21
11 広島 31 4 10 12 0 0 216 178 14 192 43 6 4 59 2.46
通算 5年 107 14 42 36 0 0 734 1/3 641 61 568 153 19 8 223 2.73

順調な成長でエースとなった若手右腕。10年タイトル総なめの大活躍で球界を代表する存在に飛躍。
ボーイズリーグ時代に代表エースとして世界大会優勝、MVP選出。高校では名門校で1年からエースとなり、3年時にセンバツベスト4。華々しい実績を誇り、早くからドラフト上位候補と言われていた。高校生ドラフト1巡で広島入り。
1年目は二軍育成だったが、ファームの先発1番手でチームトップの投球回数。そして佐々岡から18番を引き継いだ2年目は開幕早々に一軍初登板。序盤は登板してはすぐ降格という状態だったが、6月中旬に3度目の先発でプロ初勝利。これ以降は一軍のほうが長くなった。それでもまだオールスターまでは顔見せ的な印象だったが、8月3勝を挙げて存在感急上昇。9月以降は5試合先発で1点未満の防御率、4連勝と圧巻の投球内容を見せ、ルイスに次ぐ安定感を誇った。シーズン9勝を挙げ瞬く間に一軍主戦力に。
150kmに迫る速球以上に特徴的なのが、ふわっと抜けるような感じのスローカーブ。この球種に自信を持っており、勝負球に使うことも多い。さすがに大舞台を経験してきた投手という印象で、力とともに実戦的な制球力を持つ。
09年は開幕からローテーション入りし前半で5勝。二桁に期待もかかったが、6月末から7連敗と2ヶ月も勝ちに見放されることに。好投しても援護に恵まれず、防御率3点台前半に収めながらも大きく負け越し。結果二桁14敗を喫して8勝止まりでシーズンを終えた。
ただ四死球減少で奪三振大幅増加と投球内容は大きく向上しており、翌年は一気に能力全開のシーズンに。大竹の故障から開幕投手を任されると、序盤から先発の大黒柱として抜群の活躍。7月頭には早くも10勝に到達した。この時点でチームの勝利数が28であり、そのウエイトの大きさが分かる。夏場ちょっと調子を崩したが、その後持ち直してエースとして君臨。15勝に届いて最多勝、そして防御率・奪三振と先発投手が可能なタイトルをすべて独占し、沢村賞選出と大飛躍を遂げた。
まだ20代前半ながらすでに投手陣の顔といえる存在。昨年もエースとしてチームを引っ張る立場だったが、6月末時点で防御率3点台中盤と前半はもうひとつ調子が上がらず。しかし夏場から調子を取り戻し、7月以降シーズン防御率を1点以上改善した。援護が少なく負け越してしまったが、2年連続の二桁勝利到達。そしてこれも2年続けて最多奪三振。
前半はフォームの崩れを指摘する声もあったが、シーズン中にきっちり立て直してきたのはさすがというところ。今季も投手陣を支える存在。

19 上野 弘文

リリーフタイプ、後半失速型

右投右打
樟南高〜トヨタ自動車 広島07ドラフト(大・社)3巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 42 0 2 2 0 8 48 2/3 59 5 29 19 1 1 26 4.81
09 広島 8 0 0 0 0 0 7 2/3 13 1 3 1 0 1 6 7.04
10 広島 27 0 1 2 2 7 27 1/3 34 7 11 8 1 0 15 4.94
11 広島 31 0 2 2 0 4 27 2/3 32 3 19 11 2 1 17 5.53
通算 5年 139 0 6 7 2 26 139 1/3 172 19 83 54 7 4 78 5.04

即戦力としてプロ入りし、リリーフで起用される投手。ただここまでシーズン通しての働きがなかなか出来ていない。
高校時代は甲子園ベスト4の実績。社会人を経て分離ドラフト3巡指名で広島入りした。同期入団の宮崎や青木高とともに即戦力と見込まれ、1年目から開幕一軍入り。序盤はそこそこの投球を見せたが、一度抹消され再昇格した7月以降はやや不安定に。31試合登板とまずまずのデビューも、終盤失点が重なって防御率は4点台半ばに終わった。
速球と小さい変化球を中心に攻める投手で、スピード表示はそこそこでも球威を感じさせるタイプ。ただ制球が粗っぽくばらつき気味で、四球が多めだった。セットアッパーを期待する声もあったがそこまでの内容は見せられず。
2年目は二軍でスタートしたが、そこで安定した投球で9セーブを挙げ6月に昇格。以降リリーフの一員として起用が増え、40試合以上の登板を果たした。ただ前半はいい状態をキープしていたものの、日程が進むにつれ内容が悪化。どんどん数字は落ちていき、最後の4試合は連続失点の乱調。最終的に前年よりも防御率を落とすことに。この後半の不調が響いたか翌09年はわずか8試合の登板のみに。
ちょっと影も薄くなったが、10年は光るところを見せた。序盤はさっぱりですぐに二軍落ちも、6月再昇格すると安定した投球を披露。信頼を上げ、7月には抑え役を任されてプロ初を含む2セーブを挙げた。このまま新抑え定着も期待されたが、オールスター前に2ホーマーを浴びて逆転サヨナラを喫すると以降失点続きに。8月には約1ヶ月戦線離脱。終盤復帰後2年ぶりの勝利を挙げたが、後半の不調が響いて5点近い防御率となってしまった。
ここまで登板数は多いもののまだシーズン通しての一軍がない。特に夏場に調子を崩す傾向が強く、前半はいいが後半さっぱりというシーズンが繰り返されている。開幕から中継ぎで登板数を増やした昨年も、一軍で投げていたのは7月まで。8月以降はずっと二軍で過ごし、強い印象を残すことは出来なかった。
依然制球は不安定で、時折アウト一つを取るのもやっとというほど手酷く打ち込まれてしまうため、競った場面には使いにくい投手。そろそろもう一段階、せめてフルシーズン一軍に留まるぐらいの進歩が欲しいところ。

20 永川 勝浩

剛球右腕、リリーフ型

右投右打
新庄高〜亜大 広島03自由枠〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 56 0 4 1 38 5 61 33 3 64 24 1 3 12 1.77
09 広島 56 0 3 6 36 3 56 53 3 48 21 1 4 17 2.73
10 広島 10 0 1 2 1 1 11 1/3 13 1 10 9 1 2 5 3.97
11 広島 19 0 1 2 0 0 22 2/3 25 3 22 8 0 2 13 5.16
通算 9年 386 0 27 36 164 36 435 2/3 385 35 481 198 10 49 160 3.31

広島のクローザーを務めてきた豪腕投手。188cmの長身を躍動させる豪快なフォームと、そこから繰り出す速球と落差の大きいフォークが魅力。
「ノーラン・ライアンを意識した」という投球フォームは、村田兆治の「マサカリ投法」にも通じる個性的なもの。大学時代は木佐貫(巨人→オリックス)と両輪として活躍し、完成度では譲るものの力強さは高く評価されていた。03年自由枠で広島入り。
投球スタイルはまさにリリーフ向きで、プロ入りすると1年目開幕直後からストッパーに定着し、実力の高さを随所に見せつけた。トータル防御率はあまり良くなかったものの、荒削りながら意外にも四死球は少なく、3勝25セーブと文句なしの即戦力。例年のレベルならば新人王でもおかしくない成績を残した。
いきなり守護神となったものの、2年目は粗っぽさが全面に出て内容大幅悪化。制球力が悪化し、フォークを見られてボール先行、苦しくなって速球を狙い打たれる悪循環に陥った。開幕早々に抑え失格となり、完全にジンクスにはまった格好に。
しかしやはり力は充分の投手。翌年抑えに座ったベイルへのつなぎ役として復活を遂げ、セットアッパーに定着。そして06年途中にベイルが故障離脱すると、順当にクローザーに“返り咲き”。これ以降不動の存在となった。07年30セーブの大台に到達。翌08年は開幕に出遅れるも、復帰するとこれまで以上の安定感で君臨。7月以降では両リーグ最多の25セーブをマークし、タイトルには届かずも、前年自らが更新したチームのセーブ記録を大幅に塗り替える38セーブ。翌09年は防御率悪化、奪三振率大幅低下とだいぶ不調だったものの、それでも36セーブで3年連続30セーブを達成、通算150セーブもクリア。
しかし5年続けてフル回転してきた影響が10年一気に出た。前年から引き続き不安定な状態で、さらに4月中旬右足内転筋の故障で戦線離脱。5月末に復帰したものの、3試合投げたところで故障再発。以降復帰できないままシーズンを終え、登板数10は自己最少の数字。
この故障ですっかり精彩を欠き、昨年も不調のトンネルから抜け出せず。5月の昇格当初はそこそこも、急激に乱れ二軍落ち。二軍でも不調が続き、一軍に戻ったのは終盤になってから。しかしたびたび失点と結果を残せなかった。セーブのなかった年はこれが初めて。
かつてのリリーフエースが寂しい姿で、ここ2年急激に存在感を失ってしまった。今季こそは復活を果たしたいところだが。あまり不調が長引くようだと状況はどんどん厳しくなる。

21 齊藤 悠葵

長身左腕、先発期待型

左投左打
福井商高 広島06ドラフト(高)3巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 6 0 3 1 0 0 32 1/3 21 4 26 16 1 1 12 3.34
09 広島 27 0 9 11 0 0 133 140 14 71 48 3 4 59 3.99
10 広島 23 2 4 7 0 1 100 135 13 49 37 3 3 62 5.58
11 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
通算 6年 60 2 17 20 0 1 277 1/3 304 32 154 104 7 8 135 4.38

先発の一角に食い込んできた若手左腕。早い内から一軍で光るところを見せ、09年満を持してローテーション定着。
高校時代は甲子園3度出場。エースではなかったが、ロッテ入りした林と左右の両輪だった。高校生ドラフト3巡指名で広島入りすると、1年目からファームで好投を見せ、終盤に一軍昇格。10月初登板先発で5回無失点の快投、いきなりプロ初勝利をマーク。次の先発も勝ちはつかなかったものの1失点の好投で、一躍期待の存在として脚光を浴びた。日本ハム入りした同音の斎藤佑樹がちょうどこの年の夏の甲子園で話題となっていたため、それに引っ掛けて「赤いハンカチ王子」などとも呼ばれた。
186cmの長身からきれいなフォームで投げ下ろす、角度のある球が持ち味。スピードガン表示は平凡ながら、緩急をつけて速く見せる。チェンジアップも有効な武器。
躍進の期待もあった2年目だったが、制球難に陥りウエスタンの最多与四球、最多被本塁打と苦しんだ。しかし背番号が若くなった翌年、故障明けから復調。終盤に一軍昇格すると先発に食い込み3連勝を記録して再浮上。
そして迎えた09年は開幕ローテーション入り。前半負け越しも3点台の防御率を維持し、オールスターまでに5勝。8月からの3連勝で二桁勝利にあと一歩と迫ったが、そこから連続KOで3連敗。惜しくも10勝は出来ず、二桁敗戦を喫してしまったが、4年目で完全に一軍の主力に定着を果たした。
しかし更なる飛躍が期待された10年は足踏み。開幕から6試合で1勝4敗、防御率7点台と乱調で始まり、二軍落ちするなどしてローテーションを維持できず。終盤はまた先発に戻ったが、最後まで安定感のない状態が続いた。4勝に留まり、防御率は5点台後半。
09年後半にガタッと落ちた奪三振率が10年も回復できず、決め手を欠いて投球が苦しくなった。巻き返したかった昨年だったが、開幕直前に背筋を痛めて離脱。6月末に二軍戦復帰したものの、すぐに肘を痛め再離脱と故障に苦しむことに。プロ6年目で初めて一軍登板なく、二軍登板も3試合のみに終わった。
シーズンをほぼ棒に振ってしまったのは、本人はもちろんチームにとっても痛手だった。終盤の練習試合やフェニックス・リーグには登板しており、今季は今度こそ万全の状態としたい。その上でもう1ランク上の投球が出来るかどうか。

23 横山 竜士

復調本格派、体力不安型

右投右打
福井商高 広島95ドラフト5位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 38 0 5 1 3 16 42 27 3 34 14 2 1 7 1.50
09 広島 69 0 3 8 0 31 64 57 5 56 26 2 2 25 3.52
10 広島 46 0 3 2 11 8 50 37 3 48 17 3 2 9 1.62
11 広島 2 0 0 0 0 0 1 3 0 1 2 0 0 5 45.00
通算 17年 441 6 39 35 17 89 720 643 84 650 269 25 29 278 3.48

リリーフで活躍する右腕。長く故障の連続に苦しんだが復活し主力に。
高校からドラフト下位で広島入りすると、3年目の97年に一軍デビュー。当時抑えだった佐々岡につなぐセットアッパーとして台頭し、いきなり10勝を挙げる活躍を見せた。力強い速球とフォークの切れが良く、奪三振率も非常に高かった。同年にプロ入りした澤崎・黒田とともに投手陣の新星として注目されたが、翌年故障低迷。99年は先発として7勝を挙げ復活を果たすが、翌年またも故障。これ以降は長く低迷。
バネの良さを感じさせる投手だが、度重なる故障が大成を阻んできた。01年にも復調の気配を見せていたが、翌年また故障。とにかく故障の連続で、一時は球威もガタ落ちし、前途が危ぶまれる状態にもなっていた。
危機的状況だったが、05年後半待望の復調。3年ぶりの勝利を記録するなどリリーフに食い込み、7月以降は23試合で1点そこそこの防御率と抜群の安定感を発揮した。この流れから開幕一軍入りの06年は抑えにつなぐ存在として活躍。後半大きく調子を落として成績悪化したが、5月には8年ぶりのセーブも記録。
全体的に投手層の薄いチームだけに、実績ある投手の復活は大きな戦力。07年はさらに存在感を見せ、総じて安定した投球でセットアッパーの一員として活躍した。登板数は97年を上回り60試合に到達。力強さも取り戻し、チーム投手陣になくてはならない存在に。08年は夏場に肩を痛めて離脱してしまったが、1点台の防御率と抜群の投球内容で活躍。故障癒えた09年はフルシーズンセットアッパーとして働き、自己最多更新の69試合に登板。夏場に調子を落として失点がかさみ8敗を喫するも、登板数・ホールド数ともにシュルツに次ぐ数字を残し、継投の要となった。10年もリリーフ陣に誤算が相次ぐ中、安定した投球を継続。6月頭に肩の不調で2ヵ月離脱という場面があったが、復帰後もリリーフの中心として活躍した。永川・シュルツの不在から抑え役も務め、チーム最多の11セーブは自己最多記録。チームのリリーフ防御率が5点台という総崩れの状況にあって、唯一安心感のある存在だった。
30代半ばになるが力は落ちず貴重なリリーバー。だが最大の問題は故障が絶えないことで、昨年はキャンプ中に腰を痛め離脱。開幕前に手術しシーズンのほとんどを棒に振ることに。実戦復帰は8月になってからで、9月の一軍登板は2度とも失点。ただ投げられるところまで戻したのは朗報で、今季はリリーフとしての復活を望まれる。この故障の多さで脚光が当たりにくいが、力は確かな投手。

33 豊田 清

ベテランリリーフ、制球力型

右投右打 最優秀救援(02,03)
鈴鹿高〜同朋大 西武93ドラフト3位〜05、巨人06〜10、広島11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 巨人 50 0 3 2 0 26 46 1/3 45 4 49 5 1 2 17 3.30
09 巨人 46 0 2 2 5 15 40 2/3 35 3 32 15 1 1 9 1.99
10 巨人 16 0 1 1 0 3 14 1/3 22 3 18 6 0 0 7 4.40
11 広島 32 0 2 1 0 7 26 1/3 27 3 20 1 0 0 9 3.08
通算 19年 558 14 66 50 157 81 992 1/3 900 92 859 207 17 17 330 2.99

西武時代に鉄壁のクローザーとして名を馳せた投手。2年連続で最優秀救援を、それも圧倒的な成績で獲得。3年続けて驚異的な防御率で、自責点一桁はまさに圧巻。
大学から西武入りし、3年目にローテーション入りしてシーズン10勝マーク。翌年故障に泣くも、99年再び10勝と当初は先発で活躍。ただ00年5勝に留まり、ここまでは完全な隔年型で実績の割に地味な存在だった。しかし01年、抑えに定着すると別人かと思うようなピッチング。それまでより明らかにスピードが増し、ここまでいい投手だったのか、と眼を見張らされた。28セーブを挙げ守護神に。先発時代に平凡だったストレートが7〜8km増速し、絶対の武器フォークにも磨きがかかった。
もともとは隔年選手だっただけに、「2年目以降」には不安もあった。が、02年はリーグ記録の38セーブ(当時)、44セーブポイントとさらにスケールアップ。特に四球の少なさは圧倒的で、抜群の制球力でほとんどの場面で打者三人斬り。あっという間に追い込み、仕留める。その勢いは翌年も衰えず、セットアッパーの森とのコンビは他球団が羨む安定感を見せた。翌03年も38セーブをマークし、ロッテ小林雅と激しく競り合った末2年連続タイトル獲得。
たださすがに疲労がたまったか、03年終盤にリタイア。これ以降故障に悩まされるようになり、ちょっと精彩を欠くようになった。04年は1点未満の防御率と安定感は優れるも離脱があり11セーブ止まり。そして05年は被安打急増で投球内容が大幅に落ちた。防御率も抑え転向後ではワースト。
06年FAで巨人へ移籍。だがやはり状態は悪くなっており、序盤こそセーブを稼ぐも5月に派手に炎上するとそこから失速。二軍落ちもあり、7月以降は3セーブしか挙げられなかった。復活を期した07年も序盤に早2敗を喫する不安定な投球で抑え復権はならず。ただその後はセットアッパーとして復調。久々に登板数も40試合を越えどん底は脱した。翌年は後半息切れで大きく数字を落としたが、前半好調で5年ぶりの50試合登板。
越智、山口の台頭で少し影は薄くなったが、09年も主力リリーフとして活躍。一歩引いた形になったことが逆に良かったか、近年では一番状態のいいシーズンだった。クルーン離脱時には代役抑えも務めて5セーブ。1点台の防御率は移籍後初めて。だが翌10年は一転して不調で、再三二軍落ち。後半はほぼ二軍暮らしとなり、登板数は西武時代の98年以来12年ぶりの20未満に激減。もう40歳近いとあって、シーズン後戦力外に。
自由契約後、昨年は広島に移籍。改めてしぶとく力を発揮した。序盤5試合投げたところで故障で戦列を離れたが、7月復帰し以降はリリーフの一角で戦力に。終盤足の故障で離脱するも、前年の倍となる32試合に登板。
近年決め手不足から増えていた四球が、昨年はシーズンでわずか1個。抜群の制球力は健在だった。球団は引き続き戦力として計算していることを示唆していたが、シーズン後自ら引退表明。少し惜しい感もあるが、自身の決断とあってはやむをえない。今季は巨人の二軍コーチに就任。

34 中田 廉

若手右腕、長身型

右投右打
広陵高 広島09ドラフト2位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
09 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
10 広島 13 0 1 1 0 0 25 20 5 17 14 2 1 12 4.32
11 広島 2 0 0 0 0 0 7 10 0 4 3 0 1 5 6.43
通算 3年 15 0 1 1 0 0 32 30 5 21 17 2 2 17 4.78

将来性を期待される若手投手。まだ二軍を抜け出せていないが、先発候補と目される存在。実父は近鉄・広島・ヤクルトに在籍した野林大樹氏で、親子プロ選手でもある。
身長189cmの大型投手で、高校時代は打者としても存在感を見せていた。ドラフト2位と上位指名で広島入り。1年目は二軍でも1試合の登板のみと少し置いていかれていたが、2年目は大きく前進。夏場に一軍昇格し13試合に登板、内4試合に先発し、終盤にはリリーフでプロ初勝利をマーク。
長身だが肉付きも良く、ひ弱さは感じさせない体型。最速で140km台後半の速球にスライダーやフォークを交える速球派スタイル。ただ昨年は開幕直後に先発機会も結果を残せず、その後一軍ではリリーフ1度のみ。シーズンのほとんどを二軍で過ごし、前年の結果を活かしきれなかった。
まだボールごとのばらつきが大きく、投手としては未完成という印象。昨年二軍でも登板数が少なく、見た目ほどには体が出来ていないのかもしれない。チーム事情からチャンスは多いはずで、今季は改めてステップアップしたい。

36 菊地原 毅

リリーフ左腕、移籍復活型

左投左打 最優秀中継ぎ(05)
相武台高 広島93ドラフト2位〜04、オリックス05〜10、広島11〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 オリックス 55 0 0 3 0 19 42 1/3 43 3 27 10 4 0 14 2.98
09 オリックス 45 0 0 3 0 12 38 45 4 29 8 2 1 22 5.21
10 オリックス 18 0 0 1 0 4 9 16 2 7 7 0 1 10 10.00
11 広島 5 0 0 0 0 0 3 2/3 2 0 1 1 1 1 1 2.46
通算 19年 446 0 14 24 3 103 373 1/3 380 40 316 141 24 18 187 4.51

広島時代の01年に当時のシーズン最多タイ記録となる78試合登板を果たした左腕。オリックス移籍後もリリーフでフル回転。
高校屈指の本格派左腕として上位指名入団。毎年のように期待の一人として挙げられていたが、なかなかモノにならなかった。一軍初登板が5年目の97年。99年に21試合に登板し3勝を挙げたが防御率7点台と、リリーフに活路を求めながらも結果が出せず。伸び悩みで存在感も希薄だった。しかし01年、ようやく遅咲きの花を咲かせた。かつての力押しから変わって癖球をマスターし、ワンポイントとして上述のフル回転。9年目にして初めて完全一軍定着を果たし、「菊地原」の名を一気に高めた。
さすがに投げすぎの反動か翌年は故障でほとんど投げられず。復帰後はまずまずだったが、04年は被本塁打増加で防御率が大幅悪化。ジリ貧傾向も見えたが、05年オリックスに移籍で復調。貴重な左のリリーフとして重用され、抜群の安定感でセットアッパーに。防御率は常に1点台で推移し、登板数は71試合。リーグトップのホールドを挙げる大車輪の活躍で、チームのリリーフ陣充実はこの人あってこそだった。
これまではやや地味な投球スタイルだったが、移籍後は広島時代より球速が増した印象。力で抑え込む投球で認識を新たにした。右打者も1割台と抑え込み、全く危なげがなかった。
ただやはり疲れは抜けきらないようで、2度の70試合登板の翌年はいずれも故障。06年は8月に肩を痛めて離脱し、復帰は07年途中。ただ今度は影響が長引かず、復帰後は13試合連続無失点の快投で瞬く間に3勝をマーク。再びリリーフの中心となった08年は序盤は良くなかったものの、交流戦に入った辺りから調子上昇。3年ぶりにシーズン通して投げ、55試合登板で防御率も2点台と安定感を見せた。
だが近年は少し印象が薄くなってきている。09年は6月に乱調に陥るなどやや不調。45試合には投げたものの、チームの低迷もあって、あまり存在感を発揮できずに終わった。そして10年はさらに調子を落とした。再三二軍落ちするなど状態が悪く、オリックス移籍以降では最少の登板数に終わった。
昨年はトレードで7年ぶりに古巣広島に復帰。実績豊富な左のリリーフとして期待されていたが、今度は度重なる故障に見舞われた。自主トレから足を痛め、開幕直前にも再発。シーズン中にも離脱するなど散々な状態。9月になってようやく一軍昇格を果たしたが、5度目の登板で今度はアキレス腱断裂の重傷。最初から最後までケガの連続というシーズンとなってしまった。
すでに36歳のベテランで、これほど故障が続いた点にはかなり不安も残る。復帰まで半年かかるということで今季は育成枠でスタート。状態を戻して復活が待たれる。

39 梅津 智弘

大型サイドスロー、リリーフ型

右投右打
上山明新館高〜国学院大 広島05ドラフト6巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 64 0 0 3 1 21 58 1/3 44 6 49 18 2 0 17 2.62
09 広島 26 0 2 1 0 9 24 2/3 17 1 16 4 0 0 5 1.82
10 広島 46 0 0 1 0 6 40 1/3 47 9 24 17 3 0 26 5.80
11 広島 23 0 3 1 0 4 20 21 1 11 3 3 1 6 2.70
通算 7年 262 0 8 11 2 75 241 2/3 212 25 177 81 11 3 92 3.43

身長191cmの長身サイドスロー投手。長い腕が遅れて出てくる変則投手で、主力リリーフとして活躍。
ドラフト6巡ながらキャンプで注目され、1年目から見事開幕一軍入り。3度目の登板時わずか3球でプロ初勝利を記録。その後も短いイニングのリリーフとして健闘し、33試合登板でまずまずの好成績を残した。
はっきり言えばスピードの遅い投手なのだが、独特の間合いと緩急でかわし、リーチの長さも打ちづらさを助長。スライダーは変化量が大きく、初対面の打者が変化球にのめってしまう場面も見られた。
往年の小林繁を一瞬思わせる特徴的なフォームだったが、06年は二段モーションの規制強化で一旦止めていた動作を修正。そのためか前半は二軍暮らしだったが、8月に昇格以降は一軍定着。非常に安定した投球を見せた。フォーム変更で球速が増し、奪三振が大幅増。完全に信頼を得、ここからはセットアッパー的役割もこなすように。07年は中盤以降疲れからか打ち込まれ、防御率5点台で終盤は二軍落ちしてしまったが、08年はフルシーズン活躍。チームトップの64登板に21ホールド、リリーフの中心として存在感を見せた。
09年も万全のリリーフとして前半鉄壁の活躍。しかしオフに治療した肩の状態が万全ではなく、我慢は限界に達していた。6月に痛み再発で戦線離脱。後半は一軍登板なく、二軍でも1試合投げただけに終わった。これ以降一時の安定感がなくなり、波が非常に激しくなった。10年は開幕から投げるも内容いまいちで5月末に一時二軍落ち。再昇格後もチョコチョコと失点があり、8月末に1イニング10失点という大炎上。これで防御率が一気に跳ね上がり、再び二軍落ちにもなった。最終的に46試合登板も、この大量失点が大きく響いて防御率は自己ワーストの5点台後半。
近年は明らかにいい状態を持続できなくなっている。昨年は序盤6試合4イニングで被安打7と不調で始まり、5月中旬から3ヶ月近く二軍暮らし。ただ8月に再昇格すると、後半は以前を思い出させる安定感を見せた。19試合で失点はわずかに2、連勝で自己最多の3勝を記録。長期二軍で登板数は前年より半減したが、内容は格段に良化した。
一時の不調は脱したか。消耗が激しく、また昨年左打者に5割以上と滅多打ちされたように使いどころを限定される投手だが、好調なら僅差でも投入できる貴重な存在。昨年後半の状態を維持したい。

41 小松 剛

速球派、発展途上型

右投右打
室戸高〜法大 広島09ドラフト3位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
09 広島 25 0 5 3 0 0 60 75 9 41 19 4 3 35 5.25
10 広島 5 0 1 3 0 0 22 2/3 36 5 19 8 1 1 20 7.94
11 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
通算 3年 30 0 6 6 0 0 82 2/3 111 14 60 27 5 4 55 5.99

先発入りを期待される若手右腕。大学に進んだ後に成長を見せた投手で、法政のエースとして活躍。ドラフト3位で広島入り。
即戦力の期待も受けた1年目は、開幕してすぐ後にプロ初登板。この時はすぐに二軍に戻ったが、5月中旬に再昇格すると今度は先発で7回1失点の好投。次の登板で5失点したものの援護に恵まれプロ初勝利を挙げた。前半は一軍と二軍を行ったり来たりだったが、7月以降はほぼ一軍定着。1年目は25試合に投げ5勝とまずまずのスタートに。
140km台中盤の速球を軸とする速球派の投手で、球種もなかなか豊富。7月までは先発中心の起用だったが、8月以降はリリーフがほとんどになった。ただまだ粗っぽい面が強く、安定感には程遠い内容。いい時と悪い時の差が極端だった。防御率8点台で3勝1敗というリリーフ成績にその傾向がはっきりと出ている。
10年は先発要員として4月頭からローテーション入り。しかし5試合の登板はいずれもパッとしない内容で、5月前半に二軍落ち。それ以降昇格はなく、前年より大幅に登板数を減らしてしまった。わずか1勝、それも6回途中までに100球を要する辛うじてというもので、完全に後退。昨年はさらに落ち込み、シーズン通して二軍暮らしのまま終了。
入団から3年後退する一方というのはちょっとまずい状況。二軍でも大きく負け越した上に63イニングで32四球といいところを見せられなかった。ここまではっきりジリ貧では早めに見切られてしまう可能性もあり、何としても今季はアピールしないといけない立場。決して層の厚くない投手陣に割って入れないようだと厳しい。

42 ブライアン・バリントン

先発右腕、中心投手型

右投右打
広島11〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
11 広島 30 3 13 11 0 0 204 1/3 183 8 136 43 18 4 55 2.42
通算 1年

昨年広島入りの外国人投手。安定感のある投球で先発の中心として活躍、チームを支える存在となった。
02年のメジャードラフトで全体1巡指名を受けた大器。だがメジャーの舞台ではなかなか期待に応えられず、10年の1勝が唯一の白星。マイナーでは07年に3Aで11勝、10年は2点台の防御率で8勝をマーク。マイナーとメジャーの狭間でやや頭打ちとなっていた投手。オフに広島と契約し来日。
エース前田健に続く先発の柱として期待され、シーズンに入るとその期待以上の働きを見せた。開幕4連勝スタートし、その後一時勝ち星から遠ざかるも6月後半からまた3連勝。前田健が予想外の不振にもがく中、8月頭に早くも二桁勝利到達。タイトル争いにも加わり、先発の大黒柱として期待以上の働きを見せた。終盤4連敗など負けが込んだものの、最終的にチームトップの13勝。
140km台中盤から後半の速球とスライダーが投球のほとんどを占める。奪三振はやや控えめで、その代わりゴロアウトが非常に多い。軸のぶれないフォームで制球が安定しており、ストライク先行で攻めてくる。
両リーグ最多の18死球が示すように、内角を突く投球が効果的だった。当然残留で、今季も前田とともに先発の軸を期待される。

46 大島 崇行

緩急左腕、リリーフ転向型

左投左打
山梨学院大付高 広島02ドラフト3巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 16 0 0 4 0 0 31 2/3 35 1 16 14 0 1 14 3.98
09 広島 7 0 0 0 0 0 9 2/3 15 4 9 1 1 1 13 12.10
10 広島 53 0 1 5 3 9 56 61 7 46 21 6 3 32 5.14
11 広島 7 0 0 0 0 1 11 10 0 8 3 1 2 2 1.64
通算 10年 96 0 3 14 3 10 154 2/3 195 23 109 65 11 8 115 6.69

長らく台頭を期待されていた左腕。先発候補として名前が挙がり続けていたが、リリーフに転向して10年一軍定着。
高校からプロ入りし最初の3年は二軍暮らし。4年目の05年後半に先発で2勝を挙げて一躍脚光を浴びた。出入りの激しさで防御率は悪かったが、新たな先発候補として期待された。しかし翌年は滅多打ちにあい、07年はわずか1試合、先発6失点KOですぐに二軍にUターン。二軍では2年続けて規定投球回到達もいずれも防御率5点台で、はっきり伸び悩みに陥ってしまった。
スピードよりも緩急に持ち味のある投手。ただ以前から制球に不安が強く、二軍でも四球が多い。荒れ球程度に収まれば打ちづらい投手だが、自滅と隣り合わせの怖さがある。
08年は二軍で防御率1点未満と圧倒的な好成績。5月に昇格し、初めて一軍登板数が二桁に乗った。とはいえ1度目の先発はまずまずも、2度目は早期KO。リリーフが多くなったがこれも出入りが激しくいまいち。06年以来の連敗は7に伸び、止めることができなかった。翌年は登板数減でまた二軍生活に逆戻り。二軍でも4勝10敗と派手に負け越し、いいところのないままシーズンを終えてしまった。
なかなか殻を破れずにいたが、10年ようやく前進を果たした。開幕直後2試合投げて二軍に落ちたが、5月後半再昇格以降は完全に一軍定着。チームに不足する左腕リリーフとしてフル回転し、6月には実に5年ぶりの勝利も記録。長く続いていた連敗を止めた。夏場には抑え役も務め3セーブをマーク。後半は5連敗を喫するなど失速し数字を落としてしまったが、チームトップ、自己最多の53試合登板で、待望の一軍定着に成功。
これまでやや決め手不足という部分もあったが、10年は奪三振率が大幅に上昇。ただ急激に登板数が増えた疲労は昨年も尾を引き、春先に足の疲労骨折で大幅に出遅れ。8月ようやくの一軍で3年ぶりの先発という場面もあったが、わずか7試合登板でほとんど戦力になれなかった。
大幅な後退を余儀なくされたが、リリーフで投げた終盤5試合は無失点で収め復調の気配も。左腕はほぼ青木一人だったリリーフ陣にもう一度食い込んでほしいところ。

47 青木 高広

技巧派左腕、緩急型

左投左打
県岐阜商高〜愛知大〜日産自動車 広島07ドラフト(大・社)4巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 24 0 0 3 0 1 55 1/3 69 8 28 12 1 0 29 4.72
09 広島 29 0 2 3 0 0 74 76 10 50 16 2 0 39 4.74
10 広島 19 1 1 6 0 2 65 1/3 102 8 45 12 4 1 49 6.75
11 広島 76 0 2 4 0 20 55 50 4 39 21 3 1 20 3.27
通算 5年 177 1 10 27 0 23 378 441 51 251 89 13 4 205 4.88

長身からの長いリーチが特徴の技巧派左腕。大きなカーブを軸とした多彩な変化球と緩急が持ち味。
社会人から分離ドラフト4巡で入団。層の薄い投手陣ということで即戦力を期待され、1年目から開幕一軍、ローテーション入りで開幕2戦目に先発登板。しかしその試合を含め好投しながら勝ち星に恵まれず、リズムが狂ったのか調子を崩し、開幕6連敗を喫した。8度目の先発で待望のプロ初勝利も、そのあとも勝てない登板が続き、2勝目は3ヵ月後の8月、リリーフ登板で。先発して3失点以内に収めながら勝てなかった試合が12回もあり、最終的に5勝も11敗と大きく負け越す1年目となった。
カクカクとしたぎこちなくも映るフォームで腕を隠す特徴的なフォーム。ほぼ変化球で攻め、好調時には非常に味のある投球を見せる。四球が少なく自滅しないのは強みでもあるが、反面ストライクを揃えすぎて打ち込まれるケースもあり、トータルでの数字はいまひとつ。
2年目以降はリリーフ登板が多くなり、時折先発もある両刀使い。ただどちらもピリッとせず定着しきれない状態が続いた。08年は先発の内容が悪くシーズン未勝利で終わり、翌09年は10試合に先発して2勝も、多かったリリーフともども安定感に欠けた。先発スタートの10年は序盤なかなか安定し、プロ初完封を記録。ところがこの1勝を境に極端に調子を落とし、4連敗でリリーフに配置転換。さらに故障で2ヵ月離脱し、復帰後も状態は戻らず。春先の好調は吹き飛び、最終的に自己ワーストの成績で終わった。
先発ではいい状態が長続きせず、貴重な左ということで昨年はリリーフに専念。腕を下げてほぼサイドスローに転向、シーズン通して一軍にいた唯一のリリーフ左腕ということで登板数は飛躍的に多くなった。開幕からフル回転しチームトップ、リーグでも2番目となる76試合に登板。春先6試合で3敗を喫するなど常時好調ではなかったが、様々な場面で投入されこれもチームトップとなる20ホールドを記録。
成績的にはやや不満の残る部分もあるが、どうやらリリーフで一本立ちか。シュートとカーブで左右を揺さぶるというのが基本的なパターン、だが球威には欠けるためか対左の結果はいまいち。ここを確実に抑えられればもっと信頼感も増すが。

48 岸本 秀樹

大型右腕、パワー型

右投右打
平安高〜近大 横浜05ドラフト5巡〜07、広島08〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 37 0 2 2 0 4 35 1/3 37 2 27 18 3 4 21 5.35
09 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
10 広島 51 0 1 2 0 10 60 1/3 86 6 45 21 5 3 40 5.97
11 広島 42 0 3 2 0 10 45 1/3 38 1 46 19 4 3 21 4.17
通算 7年 154 0 6 7 0 24 179 2/3 204 13 144 78 15 10 102 5.11

189cmの長身から投げ下ろす速球が武器の大型右腕。技術的には未熟ながら、迫力ある投球で期待される。
大学から横浜入り。最大の売りは150kmの速球で、ドラフト5巡入団ながら開幕一軍入りし、春先はリリーフとしてなかなかの投球を見せた。しばらく二軍落ちのあと、8月に再昇格して先発登板。序盤KOで結果は残せなかったが、トータル15試合と1年目としてはまずまずの登板機会を得た。
迫力はあるが、制球が悪く総合的にはかなり粗い投手。2年目の06年も開幕一軍入りしたが、4度のリリーフ登板中3試合で失点。長期の二軍暮らしで一歩後退してしまった。07年もわずか3試合の登板に終わり、そのうち2試合で被弾と結果を残せず。
ややジリ貧となっていたが、08年広島に移籍。新チームでもその球威は大いに期待され、自己最多の登板機会を得た。5月にプロ初勝利も記録。ただ安定感には程遠く、いい状態が長続きしなかった。5月失点続きで二軍落ち、再昇格の7月からは良かったが、8月後半はまた失点続き。登板数は増えたが防御率は5点台と結果を残せず。これで期待値が下がったか、翌年はシーズン通して二軍暮らし。
しかし10年は一転して登板数大幅増。開幕一軍入りし、一時二軍落ちも5月以降はほぼ定着。4年ぶりの先発など起用の幅は広く、最終的に自己最多、チーム2位の51試合登板。ホールド数はチームトップを記録。防御率は6点近くと決して内容は良くなかったが、投手層の薄さを突いて浮上してきた。昨年は二軍でスタートしたものの、5月後半に昇格すると以降はリリーフでフル回転。登板数は微減も3勝は自己最多、防御率も4点台前半と良化させた。
ただ前年減った四死球はやや増え、信頼を得るには苦しい内容。特に後半は乱調気味で、8月以降20試合で14失点、防御率7点台とかなり崩れた。登板機会は多いものの、接戦を任せるにはかなり怖い投手。タフなリリーフは不可欠な存在で、もう一段二段のレベルアップが欲しいところ。

53 林 昌樹

力投サイド、消耗型

右投右打
興誠高 広島98ドラフト3位〜11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 17 0 0 0 0 3 18 20 4 13 6 0 0 9 4.50
09 広島 46 0 0 2 0 5 48 1/3 55 5 27 19 4 1 23 4.28
10 広島 26 0 0 1 0 1 25 2/3 40 4 19 7 1 0 17 5.96
11 広島 2 0 0 0 0 0 2 1/3 0 0 5 0 0 1 0 0.00
通算 14年 276 0 7 10 1 37 278 305 34 187 104 22 4 128 4.14

サイドスローからの勢いのある球が魅力のリリーフ右腕。7年目の04年急台頭し一軍戦力に。体格もあり、投球自体に迫力を感じさせる投手。
02年まではほとんど二軍暮らしだったが、03年、1球でプロ初勝利を記録。これで勢いに乗ったか、翌年は序盤から一軍に定着し47試合と登板機会激増。そこまでは四球も多く荒々しすぎる面があったが、それもいい感じでまとまってきた。横手から非常に変化量の大きいスライダーを投じ、フォームにも躍動感がある。
実質1年目ということで後半は調子を崩し、最終的にはだいぶ数字を落としてしまった。その影響を引きずったのか、05年はほとんど二軍暮らし。終盤5試合に投げたのみで、内容も全く冴えなかった。足踏みしたが翌年復調。開幕一軍入りで15試合連続無失点の快投を見せ、主力リリーフに返り咲きを果たした。自己最多の61試合に登板し、すべての面で04年を上回る成績。07年も開幕から全開で、14試合連続無失点でスタート。横山とともに永川へつなぐ存在として活躍を見せた。
チームにとって重要な戦力だが、課題も露呈。日程が進むごとに調子を落とし、夏場にはだいぶ乱れてしまった。この序盤に快走・夏場に失速というサイクルは前年同様であり、活躍したシーズンはすべて同じ状態になっている。どうもシーズンのスタミナに欠けるようで、登板数がかさんでくると疲労ではっきり落ちてしまう。
08年は不調に加えて故障もあり、登板数は17に激減。しかし09年は持ち直して、シーズン通してリリーフの一角で回転した。ただ夏場に崩れる傾向はまた再現され、7月5試合で11もの失点を喫する大乱調。これが響いて防御率は4点台に。
シーズン中に一度燃え尽きてしまう消耗の激しさが最大のネック。消耗の激しさとともに疲労も残りやすいのか、多く登板した次の年は不調に終わることが目立つ。10年は乱調傾向が強く出、好不調の差が極端で非常に不安定な状態。8月二軍調整を挟んで2連続で打ち込まれ、終盤は二軍で過ごした。登板数は減り、6点近い防御率に終わった。
昨年はシーズンのほとんどを二軍暮らし。8月昇格すると2試合打者7人から三振5を奪う投球を見せたのだが、すぐに二軍に戻されてしまい以降登板機会は巡ってこなかった。シーズン後戦力外に。
体調次第でまだまだやれそうな印象だったが、トライアウト参加も獲得球団はなかった。昨年限りで現役を退き、スタッフとして球団に残ることに。

54 宮ア 充登

遅咲き新人、速球型

右投右打
智弁和歌山高〜ホンダ鈴鹿 広島07希望枠〜11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 12 0 1 6 0 0 47 55 4 21 25 6 2 36 6.89
09 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
10 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
11 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
通算 5年 43 0 4 11 0 5 119 2/3 129 15 66 51 11 3 75 5.64

07年希望枠で入団の右腕。社会人で10年を過ごし、28歳での遅いプロ入り。投手が弱いと言われるチームで即戦力を期待された。
開幕一軍入りを果たし、2戦目にリリーフでデビュー登板。初勝利も記録したが4戦連続失点、10点を越える防御率で二軍落ち。序盤は完全にプロの壁に跳ね返された。その後再昇格し、以降は先発にリリーフにと起用回数も増え、最終的には31試合に登板。計3勝を挙げた。
持ち味は最速150km超の速球。スリークォーターから球威で押し返す投球スタイル。ただやや一本調子な面も強く、全体的に投球が雑。即戦力というには少し微妙な結果で、5月以降も防御率は4点台でそこそこ止まりだった。
2年目の08年は先発で期待され、開幕ローテーション入りしたが、全く勝つことができなかった。二軍調整を挟んで開幕から5連敗、8月にリリーフで1勝を挙げるも、続く先発登板は2回持たずにKOされ、以降は二軍暮らし。9度の先発は7点台の防御率で0勝6敗と散々で、前年より成績を落として終わった。
ここまで期待に応えたとは到底言い難い。そしてこれ以降は一気に影が薄くなり、一軍に呼ばれることさえなくなってしまった。3シーズン二軍生活が続き、戦力外・自由契約に。キャリア5年とはいえ既に33歳で、これほど一軍から遠ざかってはさすがに厳しい。希望獲得枠でプロ入りも寂しい結果に。

58 デニス・サファテ

新守護神、剛球型

右投右打
広島11〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
11 広島 57 0 1 3 35 1 60 2/3 40 2 82 16 0 0 9 1.34
通算 1年

広島の新たなクローザーとなった新外国人。豪快な速球を武器に打者を牛耳る豪腕投手。
メジャー通算は4年で92試合登板だが、119イニングで131の三振を奪った力を持つ。10年は3Aで47試合20セーブを記録。故障者続出で空位となった抑え候補として獲得されると、開幕前からそのスピードが話題に。予定通り抑えに収まり、開幕直後は失点が続いて不安定なところも見せたが次第に安定。完全に守護神として君臨し、順調にセーブを量産。オールスター時点で22セーブを挙げ、リーグトップを快走。
なんといっても魅力はそのスピード。平均で150超、150km台中盤に達する威力で、力でグイグイ押してくる迫力のある投球。奪三振が非常に多く、単発の長打以外での攻略はちょっと難しいという印象。
夏場もさらに快調に飛ばし、8月は12試合無失点。30セーブを突破しタイトル獲得目前というところだったが、9月末股関節を痛め戦線離脱。CSを目指すチームにとっても大きな痛手となってしまった。最後は故障に泣いたが、シーズン通してほぼ危なげなく力で圧倒。今季も当然クローザーとして期待される。

62 今井 啓介

若手右腕、先発期待型

右投右打
中越高 広島06ドラフト(高)2巡〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
09 広島 9 0 1 3 0 0 45 2/3 38 4 28 15 1 1 19 3.74
10 広島 11 0 0 4 0 0 37 1/3 42 7 24 18 3 1 22 5.30
11 広島 11 0 1 2 0 0 30 1/3 34 0 22 7 3 1 10 2.97
通算 6年 31 0 2 9 0 0 113 1/3 114 11 74 40 7 3 51 4.05

ここ3年毎年チャンスを与えられ、一軍定着を狙う若手右腕。なかなかもう一歩突き抜けられないが、なかなか期待の大きい投手。
高校時代甲子園の舞台には無縁だったが、その素質を高く評価され高校生ドラフト2巡で広島入り。当初の3年間は二軍で過ごした。1年目は13イニングで10、2年目18イニングで18と酷く四球が多く苦しんだが、3年目は18試合すべて先発し6勝をマーク。まだ制球に不安は残すも、チームで唯一規定投球回到達と二軍の主力投手に。
そして4年目ファームでは1勝9敗と大きく負け越したものの、防御率向上、四球も大幅に減り、内容を良化させた。夏以降は一軍に初昇格。先発で多く起用され、9月にプロ初勝利を記録。期待株として脚光を浴びるように。
癖のないオーバースローから140km台後半のスピードを持ち、高校時代から決め球として自信を持っていたスライダーを軸とする本格派タイプの投手。入団当初苦しんだ制球は随分まとまり、先発入りを期待される存在に。
ただその後2年はやや停滞状態。10年は肘を痛めて少し出遅れ、復帰後も昇降格を繰り返すエレベーター状態。登板数こそ前年を上回ったものの、7先発を含む11登板で4敗と結果を残せず。昨年は二軍でも振るわず一軍登板は8月末になってから。
ただ9月下旬に先発で2年ぶりの勝利を記録し、前年より随分内容が良くなった。一軍登場から3シーズンを経過し、25歳となる今季はそろそろ二軍を卒業したいところ。先発でいくなら昨年の対左被打率3割7分は絶対に改善すべきポイント。

70 マイク・シュルツ

長身リリーフ、ハイタワー型

右投右打
広島08〜11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 55 0 3 4 0 18 53 47 1 43 20 0 2 19 3.23
09 広島 73 0 5 3 1 35 75 57 0 72 22 0 2 19 2.28
10 広島 11 0 0 1 7 1 10 1/3 10 0 8 2 0 1 4 3.48
11 広島 19 0 0 0 0 9 17 22 1 7 11 1 1 2 1.06
通算 4年 158 0 8 8 8 63 155 1/3 136 2 130 55 1 6 44 2.55

201cmの長身から剛球を投げ下ろす超大型投手。外国人特有のステップ幅の小さいフォームで、高い角度から放つ150km超の速球が大きな武器。
メジャーは07年1試合登板しただけの実績も、マイナーのリリーフをこなしてきた投手。広島でもリリーフを予定していたが、右肩を痛めて1年目開幕は出遅れ。5月の交流戦の時期に昇格してきた。最初からいきなり厳しい場面を任され、3度目の登板で来日初勝利。6月から7月にかけて12試合連続無失点の好投を見せて、中継ぎの一角として活躍。この連続無失点が途切れた途端大きく調子を崩したものの、8月以降は立て直し、最終的に50試合以上登板でチーム2位の18ホールドを記録。
これだけでも充分な活躍だが、2年目の09年はさらに圧巻の投球を見せた。開幕3試合目から5月末まで22試合連続無失点、鉄壁のセットアッパーとして君臨。ゲーム終盤を支え続けた。バテからか夏場に乱れる場面があったが、終盤にはしっかり復調。救援勝利の差でタイトルは逃したものの、山口と並んでリーグ最多タイのホールドを記録した。73試合登板はチームトップでリーグ2位タイ。
高いところから降ってくる150km超の剛球は容易に打ち返せない威力を誇る。ストライクゾーンで勝負して押し返せる投手で、一発を食らわないのは非常に大きな魅力。奪三振も多く、リリーフの軸として存在感を発揮。
10年は離脱した永川に替わって抑えとなり、7セーブを記録。だが5月前半腰痛で離脱し、6月ヘルニアの手術。シーズン中にマウンドに戻ることは出来ず、ほぼシーズンを棒に振る形となってしまった。チームにとっても大打撃に。
昨年は戦列復帰し前半リリーフ登板。19試合で1点そこそこの防御率と見た目の数字は良かったが、実際は到底安心できないものだった。被打率は3割超、四球も格段に増え、走者を出さなかったのは1試合だけ。自責にならなかった失点も5あり、交流戦では3年ぶりの被弾も。6月頭に二軍落ちとなると、以降は一軍登板なし。
腰を痛めた影響が見た目にもはっきり表れ、平均で150km前後だったスピードは140km台前半に大幅低下。故障前とは別人のように変わってしまい、抑える術を失ってしまった。この内容では苦しく、シーズン後退団。ここまで状態を落としてしまっては…。

91 ジオ (ジャンカルロ・アルバラード)

変則右腕、先発型

右投右打
広島10〜11、DeNA12〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
10 広島 20 1 8 8 0 0 119 1/3 110 14 97 37 7 4 54 4.07
11 広島 18 0 3 7 0 0 99 1/3 82 5 88 34 7 3 30 2.72
通算 2年 38 1 11 15 0 0 218 2/3 192 19 185 71 14 7 84 3.46

三塁方向に大きく踏み出すフォームが特徴的な外国人投手。先発を期待されて広島入り。
マイナーのキャリアが長い選手で、メジャー経験はなし。過去には独立リーグや台湾でもプレーし、08年には台湾統一の選手としてアジアシリーズで来日登板。第2回のWBCにプエルトリコ代表として出場。
来日すると開幕からローテーション入りしたが、連敗スタート。4月前半に早々に二軍落ちとなってしまった。しかし交流戦中の6月に再昇格するとその後は安定。チーム状態の悪さから勝ち星になかなかつながらなかったが、後半は巡り合わせも良くなり、8月から先発5連勝をマーク。最終的にチームではエース前田健に次ぐ8勝を挙げた。終盤大きく乱れ防御率を悪化させたが、先発要員として戦力に。
三塁方向に体を入れ、右打者の背中側からリリースする変則的なモーション。スピードはそこそこだが芯を外す系統の変化球を交え、球速の割に奪三振も多い。被打率は全般的に低め。
ただ2年目となる昨年はバリントン、サファテが加入し、枠から押し出されるような格好となった。開幕5戦目に先発したあと6月まで二軍。再昇格するも3連敗を喫するなど前半は状態もいまいち。シュルツが二軍となった7月以降はローテーション入りしたが、安定感にはやや欠け3勝止まり。7敗と負け越してシーズンを終えた。
左右とも200打席余りで、対右が被打率1割台に62奪三振に対し、対左は2割台後半で26奪三振。対右に特化したとも言える特徴が昨年の結果にもはっきり表れている。シーズン後戦力外となったが、先発4,5番手として見れば使い勝手の良さそうな存在。年明けて横浜DeNAが獲得発表。先発の薄いチームでローテーション入りを期待される。

99 ディオーニ・ソリアーノ

育成出身、荒削り型

左投左打
広島09途中(育成)〜11
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
09 (広島 - - - - - - - - - - - - - - -*育成)
10 広島 10 1 2 3 0 0 46 45 8 27 18 1 3 22 4.30
11 広島 8 0 1 1 0 0 24 2/3 15 3 12 10 0 1 10 3.65
通算 3年 18 1 3 4 0 0 70 2/3 60 11 39 28 1 4 32 4.08

カープのドミニカアカデミー出身の左腕投手。09年途中育成契約で入団し、10年開幕後に支配下登録、一軍登板も果たした。
チームへの入団は09年からだが、練習生という形でそれ以前にも来日していた。派遣という形で06年には中国、07年から09年前半まではアイランド・リーグに所属と、様々な環境でプレー。育成選手として広島入りすると、1年目はウエスタンで6試合に登板。
2年目の10年も育成選手という立場だったが、5月頭までに二軍で3勝マークするなどし、5月に支配下登録。間もなく一軍昇格し、2試合リリーフした後6月以降は先発起用。3連敗となかなか結果は出せず二軍にいることも多かったが、終盤再昇格すると10月に4安打完封で来日初勝利。続く登板でも連勝を飾り、光を見せてシーズンを終えた。
最速150km超のスピードが持ち味の左腕。さすがに一軍レベルで見ると粗っぽさも目立ったが、力強さは大きな魅力。ただ外国人としてはあくまでリザーブという構想で、昨年は開幕直後に先発した後しばらく二軍。6月末に再昇格してリリーフを続けた後先発に廻ったが、1勝した翌日に抹消され次の登板は9月末。登板数は8試合に留まった。
シーズン後メジャー挑戦の意向を伝え退団に。先発のバリントン、抑えのサファテは今季も確定的で、残留しても枠の関係からチャンスは少なく、致し方なしというところか。被打率1割台と打たれないボールを投げていただけに少し惜しいが。

*124 河内 貴哉

大型左腕、曲折型

左投左打
国学院久我山高 広島00ドラフト1位〜
年度 球団 試合 完投 勝利 敗戦 セーブ ホールド 投球回 被安打 被本塁 奪三振 四球 死球 暴投 自責点 防御率
08 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
09 広島 - - - - - - - - - - - - - - -
10 広島 (- - - - - - - - - - - - - - -*育成)
11 広島 (- - - - - - - - - - - - - - -*育成)
通算 12年 91 1 14 26 0 13 310 2/3 358 48 265 140 15 12 183 5.30

高校時代、「江夏2世」の異名を取った大器。甲子園には未出場も、188cmの長身から150kmの速球を繰り出す大型左腕として前評判は非常に高く、ドラフトでは3球団競合の人気を集め堂々の1位入団。だがその後は非常に苦しんでいる。
プロとしては見るからに線が細く、当面は二軍で体作りになると思われたが、1年目から一軍に登場し初勝利をマーク。投手陣の壊滅という事情はあったが、その素質が一軍級だったのも確か。しかしその後は毎年期待されながらも2勝の壁を破れず。時折非常にいいピッチングは見せるのだが、それが長続きしない。左腕ではトップクラスの球威を持ちながら、シーズンの一時期にしか働けなかった。
ようやくはっきり一軍戦力となったのは04年。この年は開幕から先発で起用され、自己最多の8勝を挙げた。ただ防御率は5点台後半で、試合中に突然ストライクが入らなくなる制球難もたびたび。一度の登板で好不調が同居する不安定さが目立ち、一本立ちとまでは至らなかった。翌年は登板なしに終わり、06年はサイドスローに転向。終盤一軍昇格し、ショートリリーフ中心に15試合に登板。そこそこの結果を残し、球速もガタ落ちした一時のどん底からは少し持ち直し。
07年は上からのフォームに戻して先発再挑戦という話もあったが、結局シーズンではワンポイント起用。開幕一軍入りで当初はまずまずの投球を見せていたが、5月に歩かせて被弾という最悪のパターンを見せてしまい二軍落ち。そのままシーズンを終えてしまった。
そしてこれ以降はずっと一軍から遠ざかっている。だけでなく、08年5月に肩を手術して以降実戦からも遠ざかることに。リハビリが続き、10年からは育成選手に。投げられない状態で丸3年を過ごした後、昨年二軍で久々に実戦復帰。ほぼワンポイントのみの8試合に留まったが、ようやく光も見えてきた。
ただ実戦から長く離れてもう来年で30歳。今季は育成選手としても3シーズン目となり、復帰と同時にはっきりした答を求められることにもなりそう。果たして一軍マウンドに戻れるか、正念場。